ツキが落ちた日本経済

“何時まで続くのか、この不景気は”とため息が出る昨今だが、月刊誌「ウエッジ」を“斜め読み”していたら「この不景気は日本経済のツキがガタ落ちしたためだ」という見出しにぶつかった。執筆しているのは評論家の雑賀孫市氏である。この名前、“どこかで聞いたことがあるなア”と暫し頭をめぐらしたら、戦国時代の雑賀党を率いた人物を思い出した。だからペンネームなのか本名なのか、分からない。

 それはさて置き、この文章によると、日本のツキが落ちたのは東西冷戦の構造が終わったためだという。今から35年ほど前、福島民報社が外務省報道課長だった古川清氏(先の東宮大夫、郡山市出身)を招いて開いた時局講演会で古川氏が「資源小国の日本は安い原材料を輸入して、高い技術で製品に作り上げ、それを外国に高く売ることで生きてゆくしかない。輸出高を100とすれば、ここから原材料費75を引いた25が国内に残る計算。この25を更に投資して毎年拡大再生産してゆくのが日本の経済発展の道」と語ったのが今も耳に残っている。そして、この方式で日本は世界第2の経済大国になったのだった。この過程で最大のお得意さんアメリカとは繊維、鉄鋼、家電、自動車、工レトロニクスで貿易摩擦を起こしたのは、まだ記憶にあるだろう。米国は日本との貿易戦争に負けて‘双子の赤字’で苦しんだ。

 でもアメリカが日本の経済発展を許してきたのは、共産主義国家との冷戦の中で「資本主義の優位」を東側に見せつける必要があったからだ、と雑賀氏は言う。でも、1989年にベルリンの壁の崩壊で冷戦が終結すると、もう米国にとっての最大の敵はソ連ではなく日本となったのである。そして金融システムをはじめ、いろんな分野で意識して日本経済を崩し始めた。悪いことに、冷戦によって旧共産圏の国々で経済蜂起が起き、中国などは曽っての日本がアメリカに‘追いつき追い越せ’と頑張ったように、日本を追い落とせとばかり凄まじい成長をなし遂げている。

 いま、日本は自己の30年前の姿を中国によって再現して見せられているようなものだ。その中国に労賃・コストが安いからと日本の企業2万社が工場を進出させたら、モノ作りの上で貴重な財産だった我が国の終身雇用制は立つ瀬が無くなる。失業率5.5%が全く解消しない訳である。そして最大のツキの無さは、状況の激変に素早く対応出来る政治的りーダーが、この非常時に見当たらないことだろう。(2003.3.26)
元福島民報社専務取締役
編集局長 星 一男