会社のレベルは社員のレベル

 筆者が高校時代、甲子園を目指した野球少年だったことは「斜め読み聞きかじり」に一度書いた覚えがあるのだが、その時の監督だった方が庄司昊明という当時東北大学(旧制)野球部のキャプテンだった。なかなか豪快な人で、遠征先の宿で5、6杯のメシを平気で平らげたり、練習では選手にホームベースを跨がらせてバント練習をさせたりする奇抜さもあった。

 この庄司さんが本州製紙に就職して東京に行ったのは知っていたが、しばらくして不二紙工という会社の副社長になっていた。奥さんの実家の同族会社だったためだ。そこからの庄司さんは凄かった。会社名を「リンテック」と現代風に改名し吸収合併や海外進出などで会社をたちまち大きくして、現在は東証一部上場企業に育ててしまった。今は代表権を持つ会長で、後任社長は社内から選んで後を託しているが、まだまだ社内でも財界活動でも隠然たる勢力を保っている。おっと、庄司さんの宣伝になってしまったが、ここで取り上げたいのは、リンテック社内報に載っていた庄司会長の言葉だ。世の会社経営者にはいい話だと思うので紹介したい。

 タイトルは「社員の質が会社の全てを決める」となっている。ドイツの経済・社会学者マックス・ウェーバーの「いかなる国家も国民のレベル以上の政府は作れない」の言葉を引用し「会社も社員のレベル以上の会社にはなれないのだ。いかに社員の質を向上させるか、が今後の会社を左右する」と庄司会長は書いている。どこの企業でも年度当初には「業績をさらに伸ばそう」とか「改革をさらに進める年」などと高邁な目標を掲げて社員を鼓舞するが、庄司会長はこれをやや第三者的に見つめ「これを実現するのは全て社員である。社員の質が改革のレベルを左右するのだ。社員の質的向上とは、一口に言えば‘基本的にリンテックという会社に自信を持つ人間になる’ことだ」と説く。

 なるほど。少年時代は野球を教えてもらったが、いまこの歳でまたご教授頂いた。会社とは孤独の存在ではない。必ず取引先や同業者という、あらゆる会社をパートナーとして仕事をする宿命にある。相手から「あの会社の社員は真剣に仕事をしている」「開発に積極性がある」「紳士的で協調性がある」という評判が信頼性を生むのだと思う。庄司さんはこの辺を社員に教えているのだ。
 上から下まで、今日より明日ヘ、と社員の質の伸長をはかる努力を続けるのが世の社長さん方、あなたの最大の任務ですぞ。(2003・5・7)
元福島民報社専務取締役
編集局長 星 一男