10億減少は県経済へ1.61倍の負の効果
明日の建設業を「福島の進路」に視る。

 先月末に、郡山市の管工事業の老舗である栗原工業所が自己破産した。郡山市には無くてはならない存在として業界をリードする存在だった。会長の栗原勇治氏の業界に対する貢献は郡山市管工事共同組合会館の胸像が物語っている。最盛期に26億円あった工事高も近年は20億円前後を推移し、老舗といえども不況の風には逆らえなかった。これまで建設業界を押し上げてきたリーダーたちの脱落は、福島県の経済にも大きな負の遺産をもたらしている。
 そして失業する社員たちの再雇用にも不安は募るばかりだ。このような倒産や廃業も、元はと言えば、公共事業の大幅な削減である。国や県の政策に対し、建設業に本当の未来はあるのか。
 こうした矢先、(財)福島経済研究所が発行する「福島の進路」6月号では、「福島県の建設業」と題してあらゆる角度から建設業の現在、そして未来を予測分析している。今回の特集を組まれた同研究所研究員の野木博之氏にご協力を戴き、当メディアでも、同特集を参考にまとめてみた。



建設業は平成13年で全体の12.1%

1.データから見た県内建設業
1)事業所割合の推移
.政府の景気対策のための公共工事などに下支えされる形で、漸増している。
.平成13年は全体の12.1%
2)従業者数の推移
.平成12年には従業者数は、全体の11.3%(全国平均10.0%)
3)県内総生産額の推移
.10年度は「平成の大改修」で前年度比+7.8%と大幅な増加
.12年度はその年を挟んでマイナス成長となり15.6%と大幅な減少
4)倒産件数
.データのある平成7年以降、平成14年まで、連続して最多
.平成14年は242件で全体の38.8%
5)財政面から見た建設業
.長引く景気低迷ですでに大きなダメージを受けている
.その要因として、
○市場の縮小に伴う企業間競争の激化
○発注者からのコストダウンの要請と受注確保のための工事単価の引き下げ。
○元請け、下請けなど非効率的な受注形態による収益悪化など


今後も公共工事の大きな伸びは望めない?


2.建設業を取りまく環境(建設業の需要動向)

1)全体的な需要動向
○14年度の建設投資額は9532億5800万円(前年度9.7%のマイナス、3年連続)
○14年度の民間投資額は4455億3500万円(前年比5.0%のマイナス、全体の46.7%)
○14年度の公共投資額は5007億2300万円(前年比13.4%のマイナス)
2)民間需要の動向
○民間需要の減少が建設業の需要減少の大きな要因
○「居住用」は全体の50%を占めるが、ここ数年住宅需要が低迷し前年度割れ続く
○「鉱工業用」は設備投資の抑制と中国への生産拠点の海外移転が影響し、14年は前年比37.0%と大幅な減少
3)公共工事の動向
○公共の需要は14年は「建築」で高校の建て替えやごみ処理施設建設といった大型発注があり前年度を上回ったが、「土木」は大型案件少なく前年比15.9%と前年を大幅に下回った。
○14年度の発注状況は、「県」の請負金額1273億4000万円(前年度14.1%の減)、
「市町村」が1194億9800万円(同8.5%の減)で今後も公共工事の大きな伸びは望めない

インフラ整備の格差問題は、県内も同様!


3.市町村での建設業の役割(分析結果)

1)生産額のウエイトからみた特徴(建設業の割合が高い地域に共通する特徴
○基幹産業といえる産業が少ない
○幹線道路や新幹線など交通インフラが未整備である
2)事業所数からみた特徴
○10%以上20%未満の市町村が最も多い
○火力・原子力発電所周辺の市町村に集中している
○製造業などの主力産業がない
 檜枝岐、南郷、舘岩村といった南会津地方での建設業の割合が低いのは、地域の観光資源を活用した民宿や旅館といったサービスの割合が高い。だが、総生産から見ればやはり建設業の割合は高い。
3)従業員数からみた特徴
○火力・原子力発電所に近接する市町村で従業員数が高い
○南会津地方での割合が高い
4)歳出に占める土木費の割合
○都市部で歳出割合が高いのは「道路橋梁費」に加え、「都市計画費(街路費、公園費、下水道費、区画整理費)」への歳出が多い。特に福島市や郡山市では、長期計画に基づき下水道や街路の整備が進められており、当面受注は安定
○市町村別にみたとき、都市部以外の地方の方が建設業の割合も高く、民間需要や公共事業の増減の影響は大きくなる
○都市部以外では、各市町村からの受注額は少なく、県や国からの受注増減の影響を受けやすい地域が多いのに対して、都市部や火力・原子力発電所の周辺の市町村では、各市町村からの安定した受注が確保されている(写真は郡山南拠点地区・左端がピックパレットふくしま)

5)今後の見通し
○今後、国や県が公共事業に対する支出を削減する方向に進んでいくとき、その影響を受けるのは、都市部以外の地域と考えられる。
○最近、議論される首都圏と地方のインフラ整備の格差という問題は、県内にも同様なことがいえる。
○ここにきて、注目される市町村合併の問題も各市町村の財政という面では、規模の拡大によりスケールメリットが受けられる部分がある。行政区域が拡大し、受注機会が増加する一方で、企業間の競争が激化し、激しい状況が続くと予想

人・モノ・カネ・情報面で積極的な支援を!

4.まとめ
○建設業に対する需要の減少は、建設業全体の生産額の減少に繋がり、例えば、県内で10億円の投資額の減少は、福島県経済へ1.61倍の(16億円の支出の減少)の負の効果を引き起こす
○同じく10億円の投資額の減少は全産業で132人の雇用機会を喪失させるという推計結果も導き出せる。
○今後も国や県が現状のような政策を続けていけば、建設業への需要減少が懸念される。その需要減少をカバーするだけの新産業が創出されていない
○そして、充分なセーフティーネットが整備されていないこの段階で、国や県が画一的に公共工事を削減していくことは、建設業ばかりではなく、地域経済全体に大きなダメージを与える
○最近、建設業業者が介護分野などの異業種へ参入していく動きが新聞等で取り上げられているが、今後は人・モノ・カネ・情報面で国や県がこれらの動きを加速させるために積極的な支援をおこない地方経済を支えていく必要がある

福島県の建設業〜地域での役割を考察する〜
(社)福島経済研究所発行「福島の進路」6月号から
(抜粋掲載)