特集:古民家と古民家再生

山形に大工・職人の「すごさ」を見た!
〜福島県建築大工業協会福島・伊達支部同行記〜
古民家と古民家再生を極める旅(2)

やはり大工職人の目は違った。古民家そして古民家再生の“優れもの”を求めて福島県建築大工業協会福島・伊達支部のバスツアー約50名の一行は9月26日、朝6時45分に福島駅西口を一路山形県をめざし出発したーで始まった“古民家と古民家再生を極める旅”は10月10日更新号に引き続きご案内します。
 一行は、上山市の日本建築代表作である「蟹仙洞」、天童市にあるに酒蔵美術館「出羽桜美術館」を訪ね、いよいよ山形市「風雅の国」に技と美の頂点を極める「山寺芭蕉記念館」を探訪の後、古民家の最高峰「柏倉九エ門家」にその技のすごさを目にします。

古民家を再現に6億2000万円投入!
一行は、技・談義に花を咲かせる

 バスは一路、芭蕉もその絶景に立ちすくんだであろう「立石寺」や「根本中堂」がある山寺をめざす。さすが観光客で賑わう山形である。山寺を左手にして向かうは広大な敷地に建つ「風雅の国」。中でも馳走舎は古民家のイメージを存分に味わえる切妻造りの建物だ。

 ここでちょうど昼食となる。季節の素材を生かした豪華弁当に舌鼓を打つ。昼食後は芭蕉来訪300年を記念して建てられた「山寺芭蕉記念館」を見学した。

 約1万2000・もある敷地に驚くほどの広さの記念館。総工費6億2000万円を投入し山形市が建築した。大工職人がこれを見て唸らないわけがない。「技」と「美」が埋め尽くされたような研修棟・管理棟、そして和室棟に休憩棟の数々。休憩棟である立礼席から望見できる山寺はまた格別である。ここに陣取った一行の数名は時間を忘れ、技・談義に花を咲かせる。
 特に障子、襖、畳、天井といった細部の仕上げに興味が注がれ、誰からもこんな声が聞かれた。「手の込んだ造りだ」「天然物で、しかも材料は最高の物を使っている。揃えるだけでも大変だ」「山形の宮大工のほかに京都からも連れてきたはずだ」「これだけの仕上げには豊富な道具が必要で、肝心な部分は棟梁がやっている」等、さまざまな意見や想像の世界が広がる。素人にも大工職人の驚きとため息が伝わったのである。
 ちなみに設計は京都伝統建築技術協会伝統建築研究所と平吹武建築設計事務所の企業体。施工は千歳組と市村工務店の企業体が担当した。構造は鉄筋コンクリート地下一階地上一階、木造平屋建て、延床面積は約2000・。主な外部仕上げでは、屋根が銅板・文字葺き、壁が漆喰塗り、大津壁、ジュラク土塗り、建具はアルミサッシ、木製。(内部仕上げは各棟まちまちのため省略)

16代当主、京文化の伝統と信仰を継承
圧巻だった豪農「柏倉九左エ門家」

山寺芭蕉記念館で技と美を堪能した一行が最後に訪れたのは、中山町にある豪農「柏倉九左エ門家」である。江戸時代には6700石の大庄屋で祖先は京の出。現在も16代当主によって京文化の伝統と信仰を継承している。敷地は内外併せて4000坪、建物だけでも約360坪ある。上長屋と下長屋のある長屋門をくぐると、樹齢500年の松と小豆島から運んだとする御影石の巨大灯籠が目を引く。そこから通路が手足のように伸び、特別客、武士、一般客、家族、使用人と分かれて、それぞれの間に通じる。母屋をはじめ蔵造りの仏間には金粉の仏壇。総漆塗りの上湯殿には重箱風呂と呼ばれる風呂桶があり、どれもこれも当時の優雅さが偲ばれる。

 ここでは一行も声も出ないほどの驚きで16代当主から「説教」を賜る。当主曰く。「当家も年数だけでない、いろいろな現象に遭っているが、文化財として保存することは容易ではない」と現在の生活との関わり合いに苦慮している。保存には年間約2000万円程度かかると聞き驚いた。屋根の葺き替えは毎年少しずつ補修すると言う。ゆっくりと拝見したら半日はかかってしまいそうな広さと優雅さ。そして、そこで生活を共にする当主と使用人。土間には今でも生活の臭いが漂う。外には米倉、大工小屋、見張り小屋付山門には長い庭口の裏道で結ばれている。柏倉家を後にしたのは日も落ちる4時半頃。最後は家族へのお土産を買う「チェリーランドさがえ」へ。夕食の弁当が持ち込まれ一路高速道で福島に向かう。いろいろな古民家や古民家再生の建築物を見て、一段と日本文化の良さと保存の大切さを実感した日帰りの旅となった。
 実行委員のYさんが“締めのあいさつ"でこう言った。「金持ちの人は、海外にセカンドハウスを造るのも良いが、いい家を造りたい、造ってみたいと願う我々大工、職人のためにも、今日見学したような『家』を日本に造って、私たちを育てて下さい」。この言葉は誰もが願った一日ではなかったのか。私たちの住む福島も、もう二度と建築できない「古民家」をもっと大切に保存しょうではありませんか。(おわり)