先日、喜多方市で開かれた地域活性化フォーラム『夢 喜多方』に参加した。福島大学地域創造センターが主催となって喜多方市と会津喜多方商工会議所が共催した。このところ、こうした大学がメーンとなって開かれる地域活性化フォーラムやシンポジウムが相次ぐ。10月には福島大学地域創造センターが「水循環シンポジウム」、会津大学が開学10周年を記念したフォーラム「これからの産学連携」を開催すれば、11月には日本大学工学部が4回目の「産学官フォーラム」を開き、これまでにない大学の本音が聞こえてきた。

 大学がこれまでになく「地域に根ざし開かれた大学」をめざすには訳があった。16年4月に国立大学が独立法人化に移行し、教授や職員も公務員並の待遇が受けられなくなる。言わば民間企業化に脱皮しなければ大学の存続が危うくなったということである。11月に開かれた日大工学部の産学官フォーラムで、郡山市の東北エンタープライズ先崎社長は、大学側教授陣に対し「大学の先生には、コスト意識が足りない。モノをつくることが目的ではないはず。売れるモノを造らなければダメ。コストはどうなのか、世の中にとって価値があるのかを考える必要があり、好き勝手にモノを造ってはいけない」と企業側の立場で厳しい本音を語った。

・・・ともすれば、大学の独り相撲で事が進む研究開発に民間企業は、コスト面で高いハードルが待ち構え、手も足も出ないことが多いのだ。だが、日大工学部ではビジネスチャンスに繋げたい開発研究が日夜続けられいる。その中で、最も産・学連携で商品化に近いのが「雨水ろ過長期保水システム」である。地震などの非常災害時に備え長期間水を腐らせることなく貯留できる、このシステムはまさに大学と民間が一体となって開発した技術である。間もなく民間側で認可が下る「福島県雨水活用事業協同組合」の発足で全国に販売を開始する計画だ。

 このような産学共同による技術開発はさらに容易になる。今年6月に文部科学省がホームページ上で「未来、大学とともに」〜大学の技術や人材を生かしてあなたの会社の未来を開いてみませんか〜と題してこう謳っている。1.国立大学の法人化によって産学官連携が柔軟・円滑に!.2.大学へ支払った研究費が税額控除に! .3.大学の知的財産を一元的に管理・活用する体制を整備!4.共同研究センターをパートナーに!5.大学発ベンチャーは大学施設が利用可能!といったことが、間もなく民間企業にとっては特典のようになり、大学そのものが 自社の研究室に取って代わることも可能になる。企業はもっと大学を利用すべきである。日大工学部のある教授は「地元の建設業者にとっても研究課題は大いにあるはず。公共事業が年々、落ち込む中で、ただ手をこまねいてはいられない現状がある。自社のブランド商品の開発にもっと積極的になるべきだ」と産学連携を促す。

異業種集団に大学のノウハウを伝授!
地元の「官の連携」が聞こえない?

 喜多方市で地域活性化フォーラムを主催した福島大学も地域創造支援センターを中心に地域企業との産学連携を深めている。こちらは知的創造研究、伝承、知的人材の育成、地域貢献といった地域連携である。主にシンポジウム、講座、講演会を主体に定期刊行物や登録研究会、学内研究会で地域社会との連携・協力を行うというモノである。当日のフォーラム「夢 喜多方」では喜多方市の夢ある地域づくり〜と題して基調講演を行った西川和明経済学部教授が、地域発展をめざす異業種集団とともに開発した県産品そば焼酎「福島の風、出逢い」を紹介した。商品開発のノウハウを伝授しながら県産品を育て、食の安全に配慮し、地産地消にかける意気込みを披露した。

 また、地域創造支援センター鈴木浩教授をコーディネーターに西川教授をコメンテーターにパネルディスカッションが行われ、バネリストには地元の農業、工業、商業から元気ある経営者がなって蔵の町喜多方を熱く語り合った。ただ、バネリストの現状紹介に多くの時間が費やされたこと、また、大学側の喜多方活性化に対する提案や研究、さらには活性化の定義といった「方向付け」に欠けていたように思えた。ただ熱く語ることだけてなく、さらに一歩突っ込んだ討議が必要ではなかったか。中座する参加者が後半になって多かったのも課題のひとつであろう。

 ともあれ、大学が大きく変わる背景には大学の法人化と非公務員型が大きな要素となるが、技術開発、知的資源・知的財産といった大学のノウハウを民間、地域社会に還元することで、大学の生き残りを賭ける戦いは、来年を待たずしてすでに始まっている。民間企業にとっては、多くのビジネスチャンスが広がることになる。これを建設業界も見逃す手はない。介護やリフォーム事業もいいが、建設業本来の生業で商品開発を試みることも時代の要請である。企業と大学の連携で多くの商品が開発され世に出る土壌は整ったと言えるが、なぜか地元の「官の連携」がいまひとつ聞こえてこない。
(2003.12.05)

★関連ホームページ

■未来、大学とともに〜文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/03061101/001.pdf
■日本大学工学部ホームページ
http://www.ce.nihon-u.ac.jp/index_j.html
■福島大学地域創造支援センター
http://www.ipc.fukushima-u.ac.jp/CERA/