現地ルポ

東海・東南海地震が起きたら2万人の死者と震度6強や7の強い揺れの範囲が比較的西側の地域に現れると仮定した場合に建物が全壊する棟数は、木造建築物は19万3900棟、コンクリートなど3万7400棟、実に23万1400棟が全壊するというデーターが先頃発表され国民を恐怖のるつぼに陥れた。さらに地震の恐怖と同様に青少年の犯罪は年を追うごとに増えるばかりか、凶悪非道さがめだち政府も少年法の「改正」や「見直し」に本腰を入れはじめた。
 だが、地震被害や少年の犯罪も実は造り手や育てる側の誠意や努力で、ある程度は防げるものなのではないかと感じてならない。ある日、福島市桜本の三浦藤夫さん(三浦工匠店(有)社長)から「実はこんな研修会に参加してきたんだけど」と見せて頂いたのが『木造住宅技術向上のための調査研究会』に参加した時の資料である。三浦さんは大工職人だが、県木造住宅生産推進協議会会員のひとりとして先月、県木造住宅生産推進協議会主催のこの調査研究会に参加した。
 研修は7月26日未明に起きた『宮城県北部連続地震の被害状況と対策』の現地視察と宮城県栗原郡一迫町にある全木造校舎『一迫小学校』の校舎視察である。この視察の模様は自社のホームページにも掲載し「あらためて住宅の問題点や利点を実感した」と感想を述べている。当メディアでは、さらに三浦社長の話しや資料を元に、如何にして地震対策を現実に取り入れるのか、さらに子どもにとって木のぬくもりは如何に大切さか学んでみたい。

分棟式の新学び舎ー宮城県一迫小学校

まずは、三浦さんが木造校舎の素晴らしさ、木の素晴らしさを体感し、「生徒達は木造のぬくもりの中でのびのびとたくましく育っていることに感心した」とホームページで感想を述べた縄文時代の集落イメージで建てられた一迫小学校から見てみよう。同校は1996年3月に、「感動が宿り躍動する学び舎」として教育活動が開始された教育目標は、「やさしく、たくましく、かしこく」である。案内を買って出た校長先生の「言葉には言えない良さがありますね」という言葉に三浦さんもうなずけたという。さらに建物に対し生徒達の落書きが少ないのにも驚いたが、何といっても「結露がない」構造に感心したと三浦さん。
この校舎は木造の管理棟、低学年棟、昇降口棟、図書棟、中学年棟、高学年棟、特別教室棟の7棟を通路でつなぎ、楕円形をした配置を取っている。また、町民体育館を兼ねる体育館は、バレーコート4面、会議室、シャワー室、プールは25メートル8コース、さらに駐車場は250台分を備え、平成8年に完成している。
 特に中庭、2階まで吹き抜けの高学年棟の多目的ホール、天井の小屋組みを見せる普通教室、音響に配慮した音楽室、木登りができる低学年ホール
や、敷居のない幼稚園の遊戯室と保育室など福島では見られない校舎建築だ。ここには子ども達の元気な声が響き渡る。最後に「感性が違う!」と三浦社長は資料にメモった。

■現地調査事例(資料)から補足
分棟式の平面計画】
 校舎は中庭「自然と出会いのひろば」をぐるりと取り囲み、7つの棟が回廊で結ばれる分棟式のプランである。1棟の機能を絞り込んだ「住まい」に近いスケールの建物が、建築群として集落を感じさせる。隣接敷地内にはやはり木造の「一迫幼稚園」も併設され、集落景観の形成に参加する。園児・児童・教職員が共通のアプローチを経由する計画とし、ここで必ず顔を合わせて建物に入るようにしている。また棟を結ぶ回廊は開放型とされ、季節を体感できることが期待されている。近景・遠景・マッス・すき間などが模型で検討され、意匠が決定された。
 2階建ての中学年棟・高学年棟・特別教室棟・配膳図書棟は鉄筋コンクリート造、低学年棟・管理棟・昇降口棟は平屋の純木造と、分棟にし、防火区画も棟間でなされている。
分棟式とした結果、次のような長所短所が使用者側から挙げられている。
[長所]・騒音や振動がなく、静かな環境で学習できる。・低、中、高学年棟それぞれに多目的ホールがあり、学年部の交流が深められる。・多様な空間があり、楽しい夢が膨らむ。
[短所]・動線が非常に長く教室間の移動が大変である。・職員室が端にあるので、児童・特に他学年の行動が見えにくい。・建設コストがかかる。

■宮城県一迫町立一迫小学校概要
児童数 310、学級数 13、教員数 27
施工 前田建設工業(株) テクノ大手
規模 建設敷地面積42,800m2 建築面積6,037m2 延床面積6,037m2
   木造保有面積1,175m2
構造(階数) 校舎RC造(2階)一部木造(1階)クラブハウスS造(1階)
工程 建設期間 1992年4月〜1993年3月
   施工期間 1993年7月〜1994年11月
主要仕上げ (外部)屋根:和瓦(三州瓦)葺き、外壁:スギ張り木材保護塗装、しっくい塗り 窓:アルミサッシ、一部木製サッシ
(内部)床:積層フローリング床用塗装仕上げ、長尺塩ビニール張り、タイルカーペット 壁:スギ板張りワニ仕上げ、せっこうボート張り寒冷紗EP 天井:化粧せっこうボート張り、シナ合板張りワニス仕上げ
主な使用木材 スギ・ベイマツ・青森ヒバ
主な納材者 県内の木材業者(奥羽木工所)
主な製材者 県内の木材業者(奥羽木工所)

地震の被害地で在来工法の良さを実感

一迫小学校の見学に先立ち仙台市の宮城県建築士事務所協会では、『宮城県北部連続地震の被害状況と対策』について関係者の説明と現地視察を行ったが、三浦さんは自社ホームページで、「“透し貫き土壁塗り工法”で建てられた住宅は古くても地震に強いことを実感したが、“プレハブ工法”で建てられた住宅は10年から20年程度でもかなり壊れていたことに驚いた。幸いにも全壊が多かったわりには、死者ゼロに安堵した」と被害地で見た感想を話しているが、関係者の話しを「三浦メモ」からまとめてみた。(写真は国土交通省ホームページから)

.住宅メーカー 下請けへ丸投げの為、安全性が薄れる
.東北型住宅  地震に強い 耐震性 耐久性 県産材を但し仕様書に盛り込む
.地震被害   後、ブルーシート、被割、工事既得権、
        応急危険度→判定士の認定による←3等級、
        被災度区分→判定士の認定により部分修理→県産材の使用
        産学官で取り組む→復興をどうするか→仕様書作りに取り組む
                 古民家→残す方法→大工 伝統工の良さ
        ハウスメーカー 下請けで管理が手薄→→30%のシェアー
        工務店     60%のシェアーまだまだいける
                第三者が管理した方がよい物が出来る

.調査結果   震源地が浅かった→縦揺れが来た→被害が少ない
        ドガーンという地鳴りと余震が続く
        地盤の液状化
        死亡事故ゼロ 火災なし
        瓦屋根を落としトタン屋根に葺き替えをしている
        行政や学校にアピール
        在来工法の良さ→土壁が崩れない 瓦の重さとバランス
        踏ん張らないで、揺れを吸収する方が良かった


 【配付資料】
                         平成15 年8 月1 日

宮城県北部連続地震による建築物の被害に関する調査結果(速報)

国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部構造基準研究室
            独立行政法人建築研究所構造研究グループ

 国土交通省国土技術政策総合研究所及び独立行政法人建築研究所では、東北地方を中心に平成15 年7月26 日未明から続いた地震による建築物被害について、調査を実施した。以下に、調査結果の概要を報告する。
なお、調査の実施に当たっては、国土交通省東北地方整備局並びに宮城県土木部及び石巻土木事務所の協力を頂いた。

■以下はこちらにアクセス
http://www.kenken.go.jp/japanese/research/pt/miyagioki/20030801.pdf


耐震診断士講習会が毎月開催中!
NPO法人日本耐震防災事業団

 NPO法人日本耐震防災事業団(東京都板橋区)は耐震診断士講習会を各地で実施している。12月12日には東京芸術劇場で講習会が開かれたが、毎月東京で講習会が開かれている。同事業団では「日本耐震事業団だより」をFAXで送付するので問い合わせを。
電話は03−3559−7221へ
■同事業団ホームページは
http://www.nittaibou.jp/