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公共事業に『国土学』の視点を!


〜国土技術研究センターの大石久和理事長が講演〜
23日に開催された講演会の様子
23日に開催された講演会の様子
 福島商工会議所が主催する講演会『地域を支える国土学 〜自然災害大国日本 国民の安全安心を守るために〜』が23日に開催された。演壇に立った財団法人・国土技術研究センターの大石久和理事長は、近年の「公共事業は税金の無駄使いばかり」、「日本にはこれ以上の道路建設は不要」といった公共事業バッシングの風潮に対して、『国土学』という視点から異議を唱えた。

||| 国土学とは |||
 『国土学』とは、従来から使われてきた「公共事業」という言葉だけでは一般の国民に見えにくい公共事業をめぐる実情を示すための言葉である。
 近年、経済のグローバル化や中国の経済成長などを背景にあらゆる分野で国際競争が激化している。日本国内の物流を効率化し、地方で生産された農業生産物や機械部品などが迅速に輸送されることは日本の国際競争力を高めるために不可欠であり、そのために現在の道路網や港湾、空港ではまだまだ不十分であると指摘する。
 また、現代に生きる我々が便利で快適な生活を享受できているのは、我々より決して豊かとはいえなかった先祖が未開地を切り拓き、灌漑を施し、道路や橋、鉄道などを敷設してくれたおかげであり、現代の人間が過去からの恩恵を享受しておきながら、次の世代に何も残そうとしないのはエゴではないかという。近年の「公共事業不要論」にはこうした視点が抜け落ちており、「今の我々にとって損か得か」といった近視眼の見方ではなく、空間軸や時間軸を広げた大局的な視点で公共事業を考えようとする立場が『国土学』であるという。

||| 無駄な社会補償よりも将来に有用な道路整備を |||
 政府の経済統計などによると、日本の景気は回復軌道に乗っているというが、それは企業が社員を減らすことで生産性を向上させた結果であり、個別の企業は社員のリストラによって利益を拡大させても、そのリストラされた労働者については、国が生活保護などのセイフティネット施策を講じなければならず、国全体としては決して生産性が上がっているわけではないという。
 生活保護などのセイフティネット施策は、いわば「失業して何もしていない人に金を払う」ことであり、そうした社会保障費はむしろ将来に有用な道路整備費などにまわすことによって国全体の生産性の向上させ、そもそも失業者が出ないような国造りに向けられるべきだと語った。

||| 国の借金をめぐるマスコミの嘘 |||
 また、国の財政を一般家計に例えて財政危機を煽る議論にも異議を唱える。日本の借金を示す公債残高は18年度現在で約542兆円となっているが、それは決してマスコミなどが喧伝するような「一般家計が消費者金融に多額の借金している」のと同じではないという。一般家計が借金する場合、銀行などの家計の外から借り入れるが、公債の場合、その97%は国内で吸収しており、国民が国を信頼している以上、公債は順調に償還されると語る。

||| 建設工事の発注に一般競争入札は不適当 |||
 公共工事の入札については、会計法上、一般競争入札・最低価格が原則とされている。品質や性能が全く等しい製品などを購入する場合、最も低い価格を提示した者から購入することが適当だと考えられる。しかし、建設の場合、請け負った業者によって、価格はもちろん、品質や性能、工期などが大きく異なる。これらを無視して低価格だけを唯一の判断基準とする現在の一般競争入札制度には構造的に欠陥があり、価格以外の条件を加味した「総合評価方式」を前提とした議論を急ぐべきだとした。

 大石理事長は最後に「建設業は教育などと同様に未来を担う“未来産業”、“将来産業”であり、建設業に携わる人には大きな自負を持って仕事をしてもらいたい」と建設業にエールを送った。

[講師略歴] 
大石久和氏 財団法人・国土技術研究センター 理事長
プロフィール 【大石 久和氏 おおいし ひさかず
兵庫県出身。昭和20年生まれ。45年京都大学大学院工学研究科卒。平成8年建設省大臣官房技術審議官、11年建設省道路局長、14年国土交通省技監などを歴任後、16年から現職。早稲田大学大学院公共経営研究科客員教授や東京大学大学院情報学科特任教授として教鞭を振う。著書に『国土学事始め』(毎日新聞社刊)がある。




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