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決めたのは、学生寮OBへの聞き取りと現地調査
福島医大学学生寮設計コンペで辺見美津男設計室案を採用

 決めたのは、学生寮OBへの聞き取りと現地調査だった。5者中4番目に登場した辺見美津男設計室のプレゼンはいつもと何かが違っていた。発注者は「何を求め、何に期待し、何にこだわるのか」少なくても傍聴者30人には、感覚的に最も"近い答え"を出したと受け止めたはずだ。結果も上位2者の決選投票でも、5人の審査委員中4人が辺見美津男設計室案を選んだ。


 
 10月7日、福島県建築設計協同組合が公立大学法人福島県立医科大学から受託した「同大学学生寮建設工事に伴う建築設計業務」の選考審査会が同大学で開かれ、会場には同組合会員や会員外の設計者、そして一般市民など約30人が傍聴するなか行われた。審査に当たったのは、日本大学工学部建築学科松井壽則准教授、公立大学法人福島県立医科大学学生部長錫谷達夫医学部教授、同看護学部学生部長真壁玲子看護学部教授、同医学部同窓会加藤桂一郎会長、公立大学法人会津大学短期大学部産業情報科柴崎恭秀准教授の5人。第二次審査ヒヤリングまで残ったのは、(有)ノア・アーキテクツ、(株)鈴木建築設計事務所、(株)清水公夫研究室、(有)辺見美津男設計室、(株)杜設計の5者(発表順)。

 提案の中では、男女区別は開放的か、厳格的か、集団的生活か、個人的生活を重んじるか、提案者によって大きく別れたが、若い男女が同じ屋根の下で共に生活をするという条件の中で、誰もが安心・安全を第一に、男女100人の区分、階層、間仕切り、通路・階段、空間スペースづくり等、3人一組の各部屋、各階の配置等あらゆることに神経を注いだ5者の設計提案は、最終的に「学生の活き々とした生活を建築はどう対応するか」「建築は出しゃばらないこと」「学生寮の"伝統としきたり"を重んじたい」「シンプルで、単純で、分かり易い施設」「地域に愛着ある寮」の一言々に潜むプレゼン者の"下準備"の徹底振りが、審査委員の心を揺さぶった。そして発注者が求める「周辺に対するやさしさ」にどう応えたかが最後の決め手となった。

 

取材を終えて
姿形は立派なモノでも、そこに「心」が無ければ

 傍聴席には若い設計士や関係者、そして一般市民等30人が"事の成り行き"を見守った。ヒヤリングから審査発表に至るまで、すべてオープンで行う「県建築設計組合方式」(と当社は呼ぶ)は定着した。これまで傍聴するのは2人〜3人程度だったが、少なくてもこの一年の間に10倍になった。これだけ第一次審査で落ちた設計者も、最優秀者の「決め手」を捉えようと「他人の設計」にも関心が高くなったと言える。大手設計者のヒヤリングも多く傍聴してきたが、やはり慣れきった大手プレゼン者にはかなわない。だが、ここ数年2年くらいの間に、地元設計者のプレゼンもかなり上達した。

著者が思うには、やはり素人の我々にも理解できる言葉で話すことだ。姿形は立派なモノでも、そこに「心」が無ければ、建物に人々は愛情を注ぐハズがない。チョットした市でも大手設計者のみのコンペを実施するが、ヒヤリング会場では今回のような暖かみのある地元の声は聞けない。これからの設計事務所はこうしたヒヤリングで勝敗が決まることを肝に銘じなければ成らない。「発表力」は提案書を作ることよりエネルギーを必要とする。

 だが、時代は何時しか大手、地元の区別無く、この「県建築設計組合方式」が常識になる。そのとき、泣きを見ないように今から、「他人の設計」を研究し発表力を養うことだ。後は、審査委員の"目利き"だけである。陰の審査室で委員長の一言で決まるような審査委員会に成らぬように願うだけだ。「成らぬモノは成らぬ」を各委員は発揮して欲しいモノである。(2013/10/08)





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