建設業が変われば、日本は変わる

2000.5


 3月初旬、新潟県北魚沼郡小出町の小出郷文化会館は約400人の傍聴者で埋め尽くされた。地域挙げての民謡大会でもなければ、歌謡ショーの開幕を心待ちする人たちではない。新潟市から南南東へ約100キロ、人口12,000人のこの雪深い町にこれだけの人が、建設業の将来に・危惧の一念・を抱いて参加したセミナーに驚く。ある者は身を乗り出して、またある者は椅子にとっぷりと身を沈めて、この日の成り行きに注目した。それは一支部55社の生き残りを模索する全国初の試みだった。それには(社)新潟県建設業協会小千谷支部と建設経営コンサルタント(株)システムズの大きな働きかけが国、県、市町村を巻き込んだ大胆な企画が展開した。

 「21世紀の地域建設業のすがた」と名付けたセミナーの目的は、ひとつに.建設産業がどのように変化し、そのために今から何を準備すべきか。そして小千谷支部55社の今後の生き残りを議論する土俵創りであること。さらに.建設行政の今後をダイレクトに聞き、自社の生き残りを考えるきっかけを創る、この三点に絞られた。
 参加者は会員と各社の経営幹部、発注側から国、県、市町村の発注関係者と県市町村議会議員である。特に主催者側が求めたのは、地域建設業者の立場を全国に知らしめるために東京や隣接のマスコミに取材を依頼し「こんな事が新潟で起きた」という報道に気を配ったことだ。そこに"建設経営の新しい方向性や建設業の新しい可能性をひとつの地域を通して全国発信したい"という思いが込められていた。

 だが、蓋を開ければ地方中小建設業にとって現実は求めるモノより求められるモノの多さとその重さに驚きを隠せない。誰もがここ数年、建設業界を取り巻く環境の変化に重圧を感じているからだ。演壇に立つ建設省建設経済局・入札制度企画指導室長の日原洋文氏は、そんな環境変化を捉えながら切り出す。「経常JV、事業協同組合、協業組合、資本提携、合併など業界再編の可能性が大きい中で、リフォーム、リニューアル、環境復元、環境創造、バリアフリーなどの分野に様々な業種・企業が参入意欲を見せ、従来の枠組みが大きく変わる可能性がある。国はすでに中小企業向け発注の拡大と地域要件の設定などが限界に達している」と指摘する。

 しからば、どんな中小業者が21世紀に勝ち残れるのか。「仕事のできる業者、発注者の役割の重要性を知りそれを支援するシステムが構築された業者、差別化ができる業者、横 タび意識改革ができる業者」と断言する。その根底に建設行政最大の課題「不良・不適格者の排除」があるからだ。「国民から見放されない業者になることであり、見誤ってならないのは業者の顧客は役所や政治家ではない」と警告する。

 新潟は「日本列島改造論」で一躍日本の頂点に立った田中角栄元総理大臣のお膝元。長年、公共投資に潤った県だけにその悩みは深刻だ。県会議員である斉藤隆景氏は「これからは公共事業費と叫ばす『生活基盤整備費』と強調すべきだと言う。「県も・バリアフリーまちづくり事業・に30億円もの予算を計上したのだから、こうしたところに目をつける自助努力が必要だ。経済の活性化は自前で良くするくらいの気持ちでなければダメだ」など辛口批評がゾクゾク。

 「この50年間、建設業は官僚主導で来た。目をつぶった上に目隠しをして“右向け”と言えば“右”の経営でしかない。これからは、ごく普通の経営感覚を養うことだ」という山崎祐司社長(システムズ)の一言は、日本列島すべての建設業者に共通な経営姿勢に尽きる。だが「50年間の建設業のあり方は、日本のあり方でもあった。だから建設業が変われば、日本は必ず変わる」と勇気づける日原氏と「こうしたセミナーの途中で帰るような業者は生き残れないよ」と苦言を呈した斉藤県議の爽快な弁舌に“拍手喝采”を贈りたい。(2000.5)