モノへの信頼取り戻せ!

2000.6


 5月の連休明けに会津地方の中堅建設会社が「資金繰りが続かず事実上倒産」という理由で半世紀にわたって続いた会社に幕を閉じた。公共事業の削減と先の読めない経済状況下では何とも言いようがない。特に会津地方はほとんどが公共工事に生活基盤を求める、まさに建設業は基幹産業なのである。戦後55年、建設業者は国や県、そして市町村という発注者の〃施工部隊〃として頑張ってきた。「これしか予算はないぞ」と言われれば「分かりました。何とかその範囲で…」といった具合に、言われるままに設計通りに仕上げれば黙って金は貴えた。当たり前の経営感覚を越え〃どんぶり勘定〃でも会社経営は成り立ってきた。だが発注者はここ数年で〃求めること〃を変えてきた。いかに「良いものをより安くより早く」という時代にあった経営体質の改善が必要なのである。発注者はすでにものをつくらせる時代から買う時代へと転換してきた。それはVEでありPM、CM、さらにPFIと始まるのだ。

 本誌主催で開いた経営セミナーでも、建設経営研究所の平野栄治氏は経営者の責任について「無借金経営でないと、いつも資金繰りに追われ、肝心な経営ができない。銀行と資金繰りをするのが、社長の役目と勘違いしている。資金繰りに困らないようにするのが真の経営者。」と言い切る。
 また、東京のあるセミナーでも倒産会社の元経営者から生の声を聞くことができた。銀行も、建設業者も互いにとってどんな存在なのかを知る手がかりとなった。我々は「○△会社が倒産したな」と一口に片づけてるが、会社が潰れるまでの経緯は生半可ではない。バブル期には年商100億円、社員l20人に成長した元経営者のこの会社は、地元からは優良企業ともてはやされた。だがその陰には安易な銀行の融資に甘え〃資金繰り〃という経営の一番大事な面を置き去りにしてきた。銀行から融資の見返りに土地と銀行株をどんどん買わされる。だが銀行が突然、経営破綻に陥るとこの会社もわずか2力月後に自己破産を申請する。

 彼は「建設業界には倒産の経験者は山ほどいるが、しがし倒産するとどうなるかはほとんど誰も話してくれない。私は若輩で技術畑の人間で、なおさら経営には無知でした。倒産しないための本はあっても倒産したらこうなるという本は見つかりませんでした」と言う。「現場では利益の出ない仕事を受ける出来高優先の考えを改めない限り会社は成り立たないし、銀行の融資に惑わされて、会社をやみくもに大きくしていくようなやり方もこれからは通用しない。建物に根ざした信用ではなく、〃金の回り方〃という信用にすり替わっている建設会社の今の状況を、もう一度、モノへの信頼を取り戻すカタチに変えない限り、我々のような悲劇を味わう会社は滅らない」と振り返る。

 21世紀に向かって公共工事一本で会社を経営することは〃網渡り〃を意味する。まして資金繰りに奔走する経営者に会社を託す末来はどこにもない。倒産を経験した彼が真顔で語った一言一言はもっと金融知識を知ることだった。(2000.6)