一番偉いのは利益創出者

2000.7


 「いまの我々は、パソコン屋さんのために働いているようなもんですよ」と結論づけた話しを聞かせてくれたのは、いわき市内で年間20億円前後の完工高を上げる総合建設業に務める50歳代の管理職Aさん。経営者もまたパソコンができることがコストダウンにもつながると定義付け、若い社員は日夜、机に向かいせっせと書類や図面をつくることに没頭しているそうだ。「確かに書類や図面は大手にも負けない立派なものを作り、何処に出しても恥ずかしいことはない。だが本当に利益を上げているかは別問題で、企業にとって本当に優秀な人間とは、いつの時代も利益を創出できる人間であるべきだ」と強調する。

 立派な図面を納期いっぱい使って書き上げ、工事もその図面通りに工期いっぱい使って仕上げていては、人件費の削減や仕事の工期短縮にはならない。「土建屋さんと言われる規模なら、かえって年輩の人の方が利益を上げているというのも事実だし、効率よく働いてますよ。パソコンができること=優秀な人間ではないことを経営者は再確認すべきだ」と管理職Aさんの本音だ。
 会社はコストを削減し受注競争に勝ち、少しでも会社の体質改善を図りたいと思うのが経営者の本音である。ただ利益創出に対する社員管理の甘さは指摘されて当然であり、コンピユータという企業武器を入れた後の人間関係への気配りが足りないようだ。どんな素晴らしい武器や人材を企業戦略として取り入れても、それを使いこなせない経営者の器(うつわ)では問題である。

 6月に東京で行われた「建設業におけるVEとは何だ!」というあるセミナーに参加した。これまでの建設業者は護送船団とまで言われ「協調」と「対話」はしっかりと学んできた。ひとつ欠けてたものに「強調」と「競争」がある。建設省は業者陶太の一つに「良いものをより安く、より早く、より安全に」を求めた。「これは建設会社が真の競争に立たされた証しである。そのために、価値(バリュー)あるものを工学的(エンジニアリング)にお客様(クライアント)にいかに提供できるか、そのVEの成功のキーワードは社長にある」と言うのである。
 また本誌のインタビューに登場された佐藤工業の佐藤勝三社長も「もう設計まででき上がったものを値段だけで競争する時代ではない。お客様に対しても「私のところでやればお客様の考えたものより20%は安くて良いものができます」と言えて、自ら提案し良いものを創らない限り、新しい開発などはできないと、会社の「提案能力」を高めていく企業方針を打ち出している。
 まさに横並ぴ社会から一歩抜け出さなければ、はみだしてしまう時代なのだ。まさにAさんの会社もある意味でVEを実践していた。コスト削減のために若者とパソコンを導入、受注競争に勝つために図面も書類も大手に負けないものに強化した。そしてこれまでの慣習を一掃して社内の体質改善を図ったがために、年輩の不満と不安が炸裂したとも受け取れる。まさに会社も人間もコンピューターによって二極化に棲み分けされていくだろう。
 だが、どんな戦略戦術を駆使しても、実戦部隊は社員なのである。社員の内面を読み切れない経営者、自己判断に浸っている経営者にVE(バリューエンジニアリング)など先の話に過ぎない。
  企業は利益を生む人間が一番優秀と位置づけたら、「俺より年収が高くなっても当たり前だぞ!」と言える経営者ならAさんの意識もきっと変わるはずだ。(2000.7)