本当の課題は2代目教育にあり

主幹 富田正廣


 ある日、福島市内の工務店を訪ねたときのことだった。ここの2代目に会ってつくづく「この息子の教育には親も手を焼いているんだろうなぁー」と感じることがあった。まずは挨拶一つできない。話しを始めても首を傾げるばかり、「専務さんですか?」と問いかけると「専務じゃないょ」とか言って名刺も出す気もない。自分の主張はするが相手の話は聞かない。何の目的で来たのか質問する気がない。断片的な会話で話しの波長がいつまでも合わない。最近こんな若者が多いのも時代のせいと言ってしまえば片づくのだろうが、親が苦労して培ってきた信用や信頼などいっぺんで分解しそうだ。
  年の頃は30代半ばだが、工務店の2代目にはとても見えない。と言うのはサラリーマンかと思うくらい現代風なのである。まあそんな体裁はどうでもいいが、もっと人間関係を学ばなきゃ!ね〜2代目。
 まずは、初対面でも明るい挨拶は基本だ。そしてわざわざ訪ねて来てくれた人は福の神かもしれない。「こんな所まで来ていただきすみませんでした」という言葉は、後々のことを考えれば社交辞令的にも必要だ。そして日常的な会話も大事だ。「今日は寒いですね」とか「何かいい話しでもありますか?」とかは当たり前である。名刺は自分の会社の地位 や部署を知らせる最初の手段だ。我々の商売は情報を売ることだ。年の功からいっても世の中の情勢や業界の課題や話題などは腐るほど持っている。そんな「情報通 」が向こうから来たなら、タダで情報を聞き出すくらいの営業、いや経営根性がなけりきゃ何の得にもなんないよ。

 車のハンドルには、なぜ「遊び」という言葉があるのか。ハンドルを突然切ったらどこに走ってしまうか分からないからそこに安全の「遊び」が存在する。人間にだって遊びがない奴はひとりで暴走してしまうのと同じだ。日頃は何を言ってもじっと我慢している奴ほど、酒を飲むと酒乱になるのが多い。これも人生に遊びがないからだ。すぐに暴走するから怖い存在だ。
 ここの社長は技術も人間も立派な人である。職人気質でここまで会社を大きくしてきたが、どうも自分の子供はおもうどおりにならないのが世の常だ。息子は息子で親を超えようと身の丈より大きく見せようと威嚇しながら頑張るのだろうが・・。そこに気づくのにはそれぞれ時間がかかるが、常に謙虚さを忘れては親を超えることはできない。
 中堅の建設会社の2代目にもこんなタイプが実に多い。親父と同じく振る舞って下請けが離れた話しや、会社では元気がないくせに、飲み屋では元請けをいいことに下請けの社長を見つけては「○□さんよ〜。仕事ださねぞ〜」なんて、くだらないところで風を吹かせている2代目もいる。
 だが.そんなダメな2代目ばかりではない。同じ親父の背中を見て育っても、先代以上だと言われる2代目もいる。やはりそれだけの人間は常に親父以上に謙虚である。誰にでも頭を下げて、人の話を聞き下請けの相談にも耳を貸し、常に我々からもうまく情報を仕入れている。保険屋さんも、コピー屋さんも、ヤクルト配達のおばさんも、いろいろな情報を持っているのに、タダ帰してしまうもったいなさに気づかない。こっちの情報だっていろんな所に伝えてくれる営業マンになってくれるはずだ。人を不愉快にして帰すほど利益になることは何もない。

 工務店の2代目さん。親父さんも仕事のない時代は人に頭を下げて回ったはずだ。きっと話しを聞き、相談に乗って助けてくれた人はいたはずだ。そんな態度では誰もあなたの味方、相談に乗ってくれる人は出まいぞ。技術や身なりも大切だが、まず“大人”になるための“社会勉強”が必要かもしれない。もっと“遊び心”を学んで、一人前の大人になったらまた会ってみたいな。
 世の中不景気で、経営者は頭の痛いことばっかりだが、人のこころを掴む商売にとって、本当に頭の痛い課題は後継者づくり、とりわけ「2代目の人間教育にあり」かもしれないな。(2001.12)