バリアからユニバーサルへ

            主幹 富田正廣


(財)郡山地域テクノポリス推進機構や郡山商工会議所などが主催で開かれた「ユニバーサルデザインを取り入れた生活空間」セミナーが9月下旬、郡山市で開かれた。これまで「バリアフリー・デザイン」が騒がれ建築物にも多く取り入れられてきた。部屋と部屋、トイレと廊下、玄関などで「段差をなくすこと」が一般 的には用いられ、新築住宅やリフォーム住宅では大いに使われた言葉である。本来は「既成のデザインにおける不適応を解決する」という意味だそうだが、それを一歩も二歩も進んだ考え方が「ユニバーサル・デザイン」である。その意味は「あらかじめ、あらゆる使い手を想定して創造的な提案をしていく」ということである。講師にあたった中川聰氏(トライポット・デザイン代表取締役)は「福島には福島にあった、郡山には郡山にあったもの、心にしみ込むやさしさ、自然体なデザイン、使い手の側で造るデザインこそユニバーサルデザインだ」と述べ、日頃の「気づき」をいかにデザインに結びつけるかが大事だと語っている。

 小生も83歳になる母親を介護する立場にあるだけに、これまでにも多くの不都合を感じてきた。家も3度ほど改築を繰り返してきたが、そのたびに断片的な解決策しか取れなかった。たまたま土地に余裕があったおかげでベットを入れて介護できる部屋は確保できた。だが、悔やむのはこうした事態を想定できなかったことである。いや想定することは避けたいという心理と誰でも元気な時の夢のような家造りをしてしまうことが失敗なのだ。現実はやはりバリアフリー的な解決策しかとれない。これからの家造りは未来を予測して、10年先にはどうなっているのか、20年後には・・、80歳になったときはどうなるのかを現実的なものとして想定することが大事なようだ。

 福島県は現在、年齢や性別、身体的能力等の違いにかかわらず、すべての人が安全・安心して生活・活動しやすい環境づくりを進めるために「ふくしまユニバーサル・デザイン推進指針」の策定を進め、この10月にも策定する方針を明らかにしている。道路や歩道、公園、そして公共施設にも家造り以上に問題は山積している。歩道と車道の区切りのない道路、車イスでは通 れない歩道、車イスでは押せない信号機のボタン、車イスが使えない身障者専用の駐車場所など身障者・高齢者と健常者の意識の格差は大きい。

 「あらかじめあらゆる使い手を想定して創造的な提案をする」ユニバーサル・デザインの考え方は社会を変え生活を変え、誰もが一緒に時間やモノを共有できるものであると期待する。さらに設計士や建設業者には使い手の立場に立ったものづくり、すなわち自社でいかに使い手の立場で創造的な提案ができるかが明暗を分けることになっていくだろう。 時代は「役所の指示通 りにやれば良い」から「使い手のために良い」に変わってきたのである。(2002.9.25)