「安さ」を売り物にするホンモノを

            主幹 富田正廣


 若者の間でヒヤッキン(百円均一)と呼ばれる100円ショップが“老若男女”、“金の有無”を問わず市場参入以来、その人気は衰えを見せない。すでに98円、68円ショップなるものまで現れているとかで、さらに激増、激化しそうな市場である。入学、就職、転勤などで、毎年春先ともなるとさらに利用者は激増し、ひとり笑いが止まらなのが100円ショップの経営者だ。
 その100円ショップを覗けば、眺めているだけでも楽しいはずが突然驚きに変わる。「え〜。これも100円で買えるの!」と誰もがあ然とし、「あそこで買ったのは一体何だったー」と落胆、その店が恨めしい。100円ショップは実に不況時代を的にした商売である。失業や賃金カットで嘆く庶民には実に有り難い“駆け込み寺”ならぬ「駆け込み店」である。

 平成の駆け込み店は外にもある。言わずと知れた日本マクドナルド社が始めた59円バーガーである。当初、店の前の人だかりに「何事か!」と思ったほどだ。59円バーカーの登場で、一時は大学や専門学校の「学生食堂」から学生が消えたという現象まであった。さらに悪ふざけした学生が、アルバイト代で59円バーガーを全部買って、仲間におごったという話しもある。店は困ったのか喜んだのかまでは定かでないが、全部買ったと言えども、すぐ食べられる数は100個が限度だろうし、金額にして6000円足らずだ。仲間におごり、買い占めたという優越感に浸った学生はまさに「してやったりー」。
「需要の多さ」が成せる技はほかにもたくさんある。飲料水の2リットルボトルもそのひとつで、当初は280円もした同じモノが今ではコンビニ以外ならどこでも198円で買える。100円ショップ、59円バーガー、そして198円ボトルもすべて需要が供給を上回ったあっぱれな戦略である。

 だが、“59円バーガー”にも陰りが見えてきた。あれだけ飛びついた若者たちも、いまや高級な“チーズバーガー"や“てりやきバーガー”に手を伸ばしはじめた。味の薄さに飽き、「菓子を食っているようで腹の足しにはならない」というのが大方の理由のようだ。絶好調の100円ショップもいずれ景気の回復とともに高級志向へと客は変化し「あの100円ショップは何だったんだろう〜」と言う時代がすぐ来るかも知れない。しかし、100円ショップ経営者をはじめ、280円の牛丼店も290円のラーメン店も時代背景をバックに客のニーズにマッチした戦略を練って、新たな立て直しを図るだろうから心配はない。

 だが需要もろくにないのに「売上げが上がらないから単価を落とす」では、100円ショップの原理は成り立たない。この激動期こそ、「安さ」を売り物にできるホンモノと創り出さなければ、「ただ高くて、中身の薄い商品」を押し売りすることにしかならない。肝心なことは100円ショップの経営手法を建設業にも取り入れられるかと言うことである。「安くて良いモノを」それは建設業経営者の柱となる理念である。                                      (2003.3.28)