自分が何をするんだ!?

            主幹 富田正廣


 先日、福島経済研究所などが主催する講演会に顔を出した。いまや多くのタレントを売り出す大阪の吉本興業だが、その一角で「やすきよ」のマネージャーや吉本興業の全国展開を手がけたと言えば、「あっ!あの人?」と思い出す読者も多いはずだ。その木村正雄氏の歯切れの良さと、大阪人特有の早口に圧倒された。会場を埋め尽くした300人のファン?は同じ中年男性がほとんど。木村氏の生き方、人生哲学に自分を重ねてみたいというのは誰でも同じなのかも知れない。
 万雷の拍手で登壇するや「現在、私の職業はフリーターです」とあっけらかんに言えるのも大阪人らしい。33年間務めた木村氏が吉本興業を退社したのは、「仕事の先、人生の先が見え、この会社にずーと居ても、これまで以上の仕事ができるのか」を自問自答した結果であるらしい。人間誰しも、50歳を過ぎると自分の人生をふっと省みる。「このままでいいのか」と問うのは誰しも同じこと。ただ、自問自答のままゴールしてしまう者。大きな決断を持って、新たなゴールをめざす者に分かれるだけだ。

 木村氏は「大変な時代とは『大きく変わる』と書き、チャレンジする心さえ失わなければ、逆にチャンスを生かせる大きな時代だ。大事なことはあきらめないこと。自分を信じること。自分の思うような人生を送ること。仕事はその手段であって決して目的ではない。仕事が目的の人生では、あまりにも悲しいではないか」と言い切る。
 また、「これからの時代(人生)は中身の充実にマインドを切り替えることだ。20世紀という時代は、売上高が多い、社屋が大きい、従業員の数が多い、ブランド品をいっぱい持っているなど、モノをたくさん持っていることがかっこいい時代だったが、そういうことより、こころざしとか、スタイルとか、生き方とか、アイデンティティとかを持つ個人や企業が評価される時代に変わって、21世紀は人間の存在そのものが目的になっていく。そういう意味では、むしろ『まともな世の中』になっていくのではないか。これからの時代は自分が何をするんだということを打ち出すことがもっとも大事になっていく」と締めくくっている。

 小生も同じ50代。中盤にさしかかり、ある意味では、木村氏と同じ生き方を選び、同じ考え方に、心が少しずつ変化してきたひとりでもある。少しでもいいモノを買いたい、少しでもいいモノを食べたい、少しでも多くのカネを稼ぎたいと一所懸命働いた時代があった。「辞めて良かったのは、人を怒らなくても良い、面倒をみなくても良いなど、良いことづくし。悪いことといったら収入が無くなったことぐらい」と冒頭に語った木村氏に大きくうなづける。「サラリーマン人生に自らの賞味期限を付けた」点では同じだが、これからの人生を、どう生きることが自分らしい人生なのかを見つめ直すのが50代なのである。頑張ろう50代! (2003.8.7)