「金持ち」よ。大工・職人を育てよ!

            主幹 富田正廣


「古民家再生」という言葉を耳にして久しい。「平成」という言葉のニュアンスとは裏腹に現代社会は新幹線ごとく、スピードの時代でもある。それに逆行するかのように鈍行列車に乗りたいという衝動にかられる。まさに古民家が息を吹き返したのも、大手メーカーが提供する「金太郎飴」のような日本列島を縦断するスピードの家づくりから、地場工務店が地場材で手がける「手づくりの家」に心の安らぎを求めてきたに他ならない。

 現代社会はすべてが“二極化”に向かって進んでいる。商売も一人勝ちの時代であり、金持ちと貧乏の格差は開くばかりだ。社会も暇な人間と忙しい人間とに区別され、会社では忙しい人間は過労死に追いやられ、暇な人間やリストラされた人間は絶望感から自殺者が増える。また、今だらこそ、社会に恩返しをしたいという者が増える一方で、身勝手な考えで罪を犯す者は後を絶たない。

 そんな時代だからこそ、「昔は良かった」時代に戻りたいのだ。だが、皮肉である。すでに古民家は建築廃材同様に壊されていく。明治・大正・昭和初期の建築物を、何のためらいもなく、“ぶっ壊す”施主や建築屋が実に多い。守ること、残すことの大切さや難しさを意図も簡単に放棄する無神経さに腹が立つ。決して時代は戻らないからこそ、恒久に残そうとする努力を惜しんではならない。「古いから壊すんだ」という住人の言葉や「使い物にならないから壊した方がいいですよ」と説得させる設計士や建築屋に「バカヤロー」と怒鳴りつけたい。

 先日、福島県大工業協会伊達福島支部の古民家を見るツアーに同行した。一行50余名は山形県の蟹仙洞、出羽美術館、風雅の国、山寺芭蕉記念館、柏倉九左エ門家など古民家5軒を見学したが、大工さんの見る目に驚かされた。時間を忘れ、先輩が後輩に現場指導する。若い大工さんの目は輝いていた。「古きを訪ねて新しきを知る」ことこそ生きた教本だ。バスツアー最後に締めたYさん曰く、「金持ちは海外にセカンドハウスを造るのも良いが、『いい家を造りたい』と願う我々大工、職人を育てるためにも、今日見学したような『家』を日本に造って欲しい」との言葉が印象的だった。日本文化の代表作である「古民家」を後世に伝えるためにも「保存」と「再生」に我々も応援しようではないか。(写真は山形県・中山町、柏倉九左エ門家、) (2003.9.27)