今こそ、手作りの会社をめざせ!

            主幹 富田正廣


 今年も残すところ後わずかである。歳末商戦でどこもかしこも顧客争奪に躍起だ。週末にもなると朝刊には、溢れるばかりのチラシの山。郵便ポストに無理矢理押し込められた新聞を取り出すたびにカドが痛む。新聞を“読む”ためかチラシを“見る”ために新聞代を払っているのか分からない。地元紙と中央紙を取れば二倍のチラシの山となる。「チラシを入れないで!」という家庭も多い。だが、こうも世の中が不況続きだとチラシも馬鹿にできない。どこの家庭の奥方も目を皿のようにして一円でも安い物を探しては車を走らせる。それも一店舗とは限らない。チラシを切り抜き、時間を計算して、回る順番も決めて作戦を練るのである。主婦にとってみれば、「365日大戦争」なのだ。忘年会だといって毎晩、飲み屋のハシゴにウツツを抜かす輩たちには理解できない“戦争”が毎日繰り広げられているのだ。

 その山のようなチラシから、奥方から見せられた一枚のチラシに注目した。近くの青果店がB4サイズで出したザラ紙一色刷りのチラシだ。文字も手書きで、印刷だけを頼んだようなまさに手作りのチラシである。バナナ10グラムー10円。みかん一箱ー950円等々と商品名と値段が並ぶ。その下に店主らしい一言が書き添えられている。内容はこうである。
 《八百屋も戦国時代で、出店すると地元の横綱級の八百屋が相次いで出店し、対岸の火事とは言ってられない。飛びかかる火の粉ははらわねばーだが、大事なのは各店が独自性を演出し切磋琢磨すればすべて両立するのが商戦だ。しかし、どの店もそれなりの仕入れる理由とそれなりの値段があり、すべてを売ることはできないので、独自性を客に主張するのが商戦。ある日、差出人のない2通のハガキが届いた。内容は、「安売りにこだわらないで」と「新鮮、旨い、安心を心がけて」というものだ。これは“神の声”だとしていまだに事務所に飾ってある。この声を皆で協議して1.旨い果物を仕入れる 2.野菜は即日完売に近い仕入れ 3.お客さまが食べ終わるまで安心できる商品販売を心がけて、地道だが成果が上がっている》という内容である。

 ほかにも手作りチラシは増えている。住宅チラシもケバケバしいチラシの中に心温まる物に触れることがある。ーかと言えば「ゼネコンの横暴勝手は刑務所の塀などひとまたぎ・・」といった建交労福島県ダンプ支部が“入札契約適正化促進法”を法務省は守ってくれという嘆願書ならぬチラシが入ったが、こちらはこうである。
 《11月から福島刑務所の工事が始まったが、鹿島、前田は大きな工事を請け負ったにも係わらず、「交通安全推進団体」として工事現場では使用促進されているのに、請負者の都合優先で法律や国の通達は蹴飛ばされた状態。「建設業法」「入札契約適正化法」「談合防止法」「公務員法」など刑務所の塀より高くそびえるものなのに、鹿島、前田は政権政党をバックに、「公共工事の規則」など意に介さない》という内容である。この問題の賛否はともかくとして、こうした抗議文もまた手作りである。

 全国の書店でもこうした現象は起きている。「店長の一押し!」「店長お奨めの一冊!」といった“手書き作戦”で売上げを伸ばしている本屋さんが増えた。年賀状もパソコンや印刷で送るのが主流になっているが、切った金太郎飴のような味気ない年賀状に“もううんざり”という人も少なくないだろう。人間というものは、便利な物は便利で良いが、これだけ殺伐とした世の中になればなるほど、昔の良さに心を求めていく。八百屋の一言やダンプ組合の直訴もそうだが、ケバケバしいチラシや杓子定規な印刷物では、心奪われることも、惹かれることもない。
  建設業者も「談合」「贈収賄」「癒着」等々の言葉が相も変わらず新聞に踊っているうちは決して「手作り」の仕事などあるはずかない。八百屋の戦国時代を乗り切る方策に当てはめれば、1.良い材料を仕入れる 2.仕事は手抜きなく、即日の検査を徹底する 3.お客さまが住んでいるうちは、生涯安心したアフターケアをするーということになるだろう。さあ、来年こそ、建設業者の皆さん! 心温まる手作りの会社をめざしてみませんか。(2003.12.23)