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来年こそ両者は“3例の教訓”を生かせ!
主幹 富田正廣


 十二支のトップを飾る子年も後わずかとなった。ネズミに追いかけ回されたように建設業界も慌ただしく過ぎようとしている。今年も県内では多くの建設業者や関連会社が建設業という土俵から消えた。無念を残す業者もあれば、その日を覚悟した業者もある。中にはアッサリと退場して、別な業界で芽を吹こうとしている人もいる。様々な人間模様が墨絵のように描かれた一年だったとも言えよう。そんな中で最も関心を集めたのが、発注側と受注側間の建設工事費を巡る一連の設計積算のズレである。


 一つは、福島市が発注した『新庁舎建設東棟』の入札で11億円の請負差額が発生したため、当初は一般財源で整備を予定していた情報システム関連整備事業などを「庁舎整備基金」から充てることを検討するという方針が市議会で示されたという。市は建設費を約60億円と見込んでいたのだから安い買い物をしたわけだ。天下の鹿島は11億円など“ドブ”に捨てたようなものだが、地元にしたら惜しい金額である。
 
  二つ目は、福島県が発注した『アクアマリン子ども体験館』の入札を巡る問題である。2度の不調の末、3度目で地元の加地和組が予定価格の約1億1千万円を残した80%で落札した。この入札では、県側の現状に伴う積算価格を弾き出す能力が不十分だったことが明らかになった。まあ、これに携わった設計者にも問題があるというべきだ。
 
  三つ目は、会津若松市が発注した生涯学習総合センターである。こちらも県同様に世の中の流れを把握できない職員の怠慢さである。最終的にはそのミスを認めて建設工事費を嵩上げすることで3度目の入札を実施したが、地元はその予定価格も蹴って不参加となったが、フタをあければ、“トンビにあぶらげ”で、中央業者の松井建設が予定価格約19億円に対して2億5000万円に近い85%で落札してしまった。地元が予定価格の引き上げに躍起になっていたのは一体何だったのだということになった。業界内部でも“地元の驕り”ではないかという声すら上がった。発注者と受注者にはそれぞれの妥協案が必要である。互いにそれを無視して地元の優先発注などあり得ない。
 
  その地元優先を的確に入札の条件として発注したのが田村市の『田村市民体育館』である。すべての条件を市内に限定し、地元企業6社が2社ずつのJVを結成した。予定価格15億9075万円 (税込)に対して、97.7%にあたる15億5400万円(税込)で落札した。発注者側にも受注者側にも3例の教訓が生かされたと言って良いだろう。発注者は地元受注者を重んじ、地元受注者は発注者を信頼できる互いの体制が確立していなければ、「地元優先!」を一方的に叫んでも実は実らない。
 
  新聞紙上では、来年の「市長選」を巡って、早々と立候補者が名乗りを上げている。一層深まる不況の中で、“地元の活性化を図り、地元の経済を守る”そんな人物こそが、必要ではないのだろうか。来年は丑年である。社会も経済も、そして建設業界も、牛の如くゆっくりとしっかりと進みたいものである。
(08.12.8)




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