市民〔citizen〕と結ぶネットマガジン!
建設メディア「MEDIA」
Home >メディアフォーラム >2010/2/19

発注者側が“辞退”を促すとは何たることだ!
主幹 富田正廣

 巷では戸沢行夫著の「江戸の事情」という本が売れているそうである。聞くところによると、すでに徳川幕府の初期から入札制度はあったという。幕府や大名(本来は町奉行)が“町蝕”(まちぶれ=町内の町民に法令を発するお触れ)に公共施設(例えば橋)の請負者を募ったという。その工事の請負が決まった後に辞退をほのめかすと投獄される厳しい掟もあったようだ。いまで言う一般競争入札の原形であり、辞退は最近まであった厳しいペナルティー扱いされていた。法令も変わって辞退も正当化扱いとなった。その『辞退』は一般競争入札、指名競争入札に関係なく業者の間でわけ隔たりなく活用されている。イイ面ばかりではないが、これも請負う側の知恵だろう。

 その辞退は業者側だけの手法ではない。発注者側でも請負を辞退するよう促す手段として活用している。先日、ある業者が県の仕事を請け負う候補者になったが、惜しくもこの工事が「低入札価格調査制度適用工事」に引っかかった。そもそも、この制度は「調査の結果、適切な施工が可能と判断されれば落札者となり、出来ないとなれば失格となる制度」で 決して辞退を促すものではないが、ほとんどの業者はこの書類を提出することなく、あっさりと“辞退”するケースが多いのだ。もっとも、手持ち工事はいくらあるか、配置予定者技術者の手持ち工事はどうだ、手持ちの機械はや設備はあるかとか、10項目以上にわたる発注者の意に沿うような理由書を延々と書いていたのでは、この不況時には割りの合わない作業だ。適用工事になったらアッサリと辞退した方が得策と考えるのは当然だが、この業者は食い下がった。延々と理由書を書き上げて提出した。県の職員はその理由書に目をくれただけで「辞退したらどうですか?」と迫ったという。担当した職員の顔には「面倒くさい、読みたくもない」という表情がありありだったという。

 落札者にするか失格者にするかはお役人の判断だが、業者にとっては生きるか死ぬかの瀬戸際の時だ。キチンと対応して落札者になれるよう指導することで次の道も開けるだろうし、業者にしても応札したのだから本来、辞退するなど考えられない話しである。江戸幕府の時代なら、辞退を薦めた役人が投獄されてしまうだろう。本当に大切なことは、県を司る、こうした怠慢な職員を始めトップの意識の改革なのだ。辞退を薦める前に「審査や指導を受けなさい」という役人本来の根性が欲しいのだ。まだまだ、業者を鍛え、地元を育てるシステムづくりには、時間がかかりそうだ。(10.2.19)




Copyright (C) Medianetplan Co.,Ltd. All Rights Reserved.
このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。