自治体マンションにPFIを

1999.12


 人口わずか6000人の過疎化の町がにわかに活気を得た。6階建て分譲マンションは竣工2ヶ月前に35全戸が完売した。そこに集まった客数は何と400組、そこで得た見込み客は約100組という驚異的な実績は、同業他社を圧倒し全国の話題となった。
 「自治体が地主なら買い手にとって、ほんまに安心なことはありませんわ。わしらのような会社はいつ潰れるか分からへんけど、町は絶対に潰れへんどすわ!」と関西弁を捲り立て、成功の一部始終を語る人物は11月、あるフランチャイズの月例会講演のため東京駅八重洲口にいた。その人物こそ全国初の自治体との共同事業で“定期借地権付”分譲マンションを実現した姫路市の姫路リアルティー社長の田上哲生氏である。

 兵庫県神崎郡大河内町もまた、若年層の町外流出と高齢化に歯止めが掛からず、町長はもがいていた。高齢化率は県平均を10%も上回る24.3%(97年)と深刻な状況だった。町は98年3月に若年層の定住と町の活力を取り戻すための「住宅マイタープラン」を作成した。町所有の土地を民間に貸与し「分譲マンション」を建設するという画期的な企画が浮かんだ。マンション建設計画は、地主を大河内町、事業主は大手デベロッパーだったが、田上氏の会社もまた紆余曲折の中で、事業主の一角に参入し大手以上の技量と力量をもって主導権を発揮した。まさに自治体が民間活力を導入し公共事業を推進するという、まさにPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)の始まりであった。

“なぜ、このマンションがこれだけ注目され、売れ切れたのか?”、田上社長はいとも簡単にこう切り出した。「地主が大川内町という“自治体”であることが、購入者から『安心』という信頼を勝ち取ったことだ。しかも地代は61年間で80.1万円という安さと保証金なしという制度だ。これでマンション購入者は60年間・定期借地権・を手に入れることができた。建設地となった旧役場跡地を提供した町も一銭の負担もなく“遊休地”が有効に活用が図られたばかりか、地代の一括前金の実現と転入者24人、転出予定者11人を留保し、定住促進につながった結果、住民税の増収や購入者から固定資産税が入るなどの相乗効果は言うまでもない。
 同社には隣接市町村から、同様の事業依頼が寄せられ第2、第3の案件が進行中だという。また大河内町の分譲団地の22区画も事業が決定し11年10月から同社を窓口に分譲が開始した。

 だが田上社長は「全国で既に約15の自 。体が“遊休地の活用”を計画してるというのに、地元の関係者や工務店さんたちは『定期借地権』や『PFI』と言う言葉さえ、未だに理解していない」と指摘する。淡路・阪神大震災以来、人々はマンションを持つことから利用しようとする考えに変化してきた。いまこそマンションには定期借地権が有効に働く時代であり、その活用はこうした過疎地の町村より都会の方が、さらに活用できる手段だ。定期借地権付きマンションを自治体と本気でやる秘訣を田上氏に学ぼう。
その1. これまでの延長線上ではやるな。必ず物件は売り尽くせ。
その2. 両者相容れない部分を理解せよ
 この大河内町方式を機会に田上氏は『定期PFIネットワーク』を組織し全国にその輪を広げビジネスを展開する考えだ。

 ズバリ!大成功を収めた秘策は「地の利を活かし天の時を知る」ことだという。そこには東北人にはない関西人特有の商魂の“たくましさ”と“うまさ”が確かにある。      ( 1999.12)