いまどきの世相

やっぱり身に付いてない、危機管理

   星 一男
元 福島民報社専務取締役 郡山総支社長


 まだ、エ−ルフランスのコンコルド機がパリのド・ゴール空港郊外で墜落したニユースのショックが尾を引いている。怪鳥と呼ぱれ24年間も無事故を誇った〃不死鳥もついに汚点がついたか、という無念さである。というのも、198l年(昭和56年)に今回の事故機と同じにエ−ルフラシス航空001便でシャルル・ド・ゴール空港からニユーヨークに向けコンコルドで飛び立ったことがあるがらだ。大西洋を3時間45分で横断、米東部時間午前8時45分ピッタリにケネディ空港に着陸した。英仏共同製作の技術のすごさを心から称賛したものだった。
 それが、19年後に無惨な墜落事故のニュースを聞くとは…。そんな思いが引っかがっていた7月31日に、福鳥民報「あぶくま抄」を読んで「ウーム」と唸ってしまった。現在、国政を預かる面々の危機管理に対する無神経さを鋭くついていた。それも航空機に絡んでの話である。私の出身社だから褒めるわけでは毛頭ないが、最近、このコラムは出来が良いものが多くなつている。

 さて、その無神経さだが、7月29日に竹下元首相の葬儀に出席のため森首相はじめ11人の大臣、与党の首脳ら合計220人がチャーターした飛行機1機に全員乗り込み出雲空港まで往復したのだ、という。もし飛行機が落ちたらどうする気だったのだろうか。今の国を動かしている方々には国家の危機管理への神経がまるで無い、と断じていい。これまで阪神大震災や東海付臨界事故などの度に国の中枢への情報伝達が遅いと指摘され続けてきた。やっと、内閣に危機管理の機構が設けられ、有珠山の噴火や三宅鳥の大地震に対応しているようだが、なんか形式的な感が否めなかった。案の定、作れ、と言われたがら作った、という〃付け焼き刃〃ぶりを7月29日に露呈した。
 現代っ子には大昔の話かも知れないが、1963年(昭和38年)11月22日米大統領ケネディがダラスで暗殺された。その直後から全世界が大混乱に陥るのだが、その中でジョンソン副大統領がダラスからの帰途の飛行機の中で、大統領就任の宣誓をする映像が強烈だった。一刻たりともアメリカを最高権力者の空白状態にさせない、という意思と制度の存在が世界の人々に焼き付けられた。

 万が一の話であっても、首相と11人の大臣が事故に遭ったことを想定して配慮する人も組織も今、日本にはないことを自ら明白にした。7月号で指摘した「諌言(かんげん)をする側近もいなかった。竹下さんの葬儀だから、自民党の話だから…、では済まないのである。私事でも森総理大臣は総理大臣なのだ。ヤキトリ屋で飲んでいても首相であり、国家権力は付いて回る。「首相官邸にいるから危機管理を」「いまは党先輩の葬式だから危機管理は別に」ではないのだ。ちょっとした会社でも、社長と副社長が共に出張する時は別の便を取る。日本相撲協会も巡業は二手に分ける、と聞く。それを、国家のトップがやれない訳はあるまい。こんな〃三等〃首相じや、民主党に揚げ足を取られるのは当然だ。