いまどきの世相

くたばれデジタル・デバイド

   星 一男
元 福島民報社専務取締役 郡山総支社長


 沖縄サミット以来、世の中はITばやりである。言わずと知れた情報技術(Information Technology)のことだ。携帯電話を国民の2人に1人が持つ時代だ。それもiモードのすさまじい勢いには、たじろぐばかりである。このIT革命の怒濤の中で、取り残された世代の姿がにわかに鮮明になりはじめている。

 文化系の大学を出た50歳代の後半以上の父親たちの団塊である。いずれも今日の経済大国のために骨身を削って働き、功なり名を遂げ、会社の重役も勤めた方々の世代である。これを社会学的に区分けする言葉すら生まれた。「デジタル・デバイド」(digital divide)つまり情報格差、言ってみれば「電脳昔痴」(電脳とは中国語でコンピューターのこと)の層だ。努力して築き上げた社会から疎外されたことになる。くたばれ!デジタル・デバイド、と恨みの一つも言いたくなるではないか。かく言う私も「なにを!オレがパソコン音痴だ、と言うのか」といきまいて、昨年2月に衝動買い的にNECのVaiue Starを買い込んだ。早速、マニュアルを使って勉強し始めたのだが、分かりにくく進まない。いまはワープロ代わりに文章を書くくらいで、ホコリをかぶり始めた。時々、娘のムコさんが孫とテレビゲームを楽しんでいる。

 なぜストップしたのか。大きな理由はマニュアルの難解さにある、と感じていた。文章は平易なのだが、その通りやっても次に行かないのである。「とうとうポケ始めたか」と嘆き、時には「なんで、こんな文章なんだ」と腹立たしく思った。そんなところで愛読誌「選択」7月号の「挫けるな、デジタル・デバイド」を読んで、欣快を叫んだ。副題「電脳疎外者に読ませるクスリ」の通り、デジタル・デバイドされてしまったオジさん族のための文章なのだが、この中でコンピューターのエリート技術者の・機械バカ・ぶりを抉り出し、技術オタクの、律儀なんだが視野の狭さぶりを指摘していた。いわく・何でも細かく書こうとする・物事を並列的に並べてしまい、重要度の強弱がつけられない・技術者にとって当たり前だ、と思っていることが、実はアマチュアのユーザーには最も大事なポイントであることが分がっていない文章力が弱く、どちらとも取れる表現が多い等々である。

 本来、みんなが使う機器というものは、操作は簡単な物でなければならない筈だ。情報機器もこの例にもれない。逆に言うなら、いまのパソコンの操作が難しいのは、それだけ末完成だからだ。だから、パソコンもこのままでいる筈はない。おそらく短日で進歩するに違いない。かってのSF小説もどきの音声人力で機械が動いてくれるだろう。そうなったら、デジタル・デバイドなんてクソ食らえだ。現に、JAF−MATEの8.9月号に「音声認識ナビ」の話が載っている。いまカーナビは急速に進歩、音声入力が使われ始めた。IT革命もこの方向に急げ。そして経済大国功労者を疎外する社会をなくせ。いいかね、この社会は技術オタクだけのものじやないんだよ。(2000.10)