いまどきの世相

黒い雲を引きずる21世紀

   星 一男
元 福島民報社専務取締役 郡山総支社長


 大騒ぎの末に21世紀の最初の年、平成13年を迎えたが、目下のところは改まってモノ言うこともない。いや一つだけ。ほかでもないのだが、賀状の中に「新年明けまして…」という使い方のものがあったが、これは間違いだろう、と思う。「明ける」は一定の期間とか状態が終わって、次の期間・状態に入ることを言うからだ。新年が明けてしまったら、次の年になってしまう。「夜が明ける」を考えてみると分かるハズ。へソ曲がりの苦言を一席。…で、

 世紀は変わっても日本の世情も世界の紛争も同じまま流れている。せめて私たちの社会から少年の凶悪犯罪や幼児虐待、そしで不景気が消えてくれれば有り難いのだが、どうも前世紀末の黒い雲はまだまだ引きずったままだ。
 それにしても、新間記者が言う「事件の連鎖反応」を地で行くように、幼児虐待事件の連続には目を覆った。孫の可愛さを知った身としては、テレビニュースも新聞記事もまともに読み聞きできながった。6歳、3歳といえば、もうかなりの認識を持っている。その子を血肉を分けた親がここまで虐待をやれるものなのか。人間の性善説を信じる者には、この種の事件が連続して起きることに呆然としている。かつて世界でベストセラーになった「人間家族」写真集の一場面が思い出される。自人の母親が生まれたばかりの我が子を愛しげに抱く写真に添えられた文字「Bone 0f my hone,flesh of my flesh(この子は私の骨の骨、私の肉の肉)」が忘れられない。同じ母親なのに、この落差は何なのだ。日本中の女性がそうだ、とは勿論思っていないが、共に住んでいる社会の中で、こんな母親が現れる時代・世相に不吉さを感しる。世紀末の日本の教育、経済、政治の不安定さが生んだ「わが子養育本能欠損症侯群」でもあろうか。

 話題を変えよう。同じように新世紀まで尾を引きずるのがアメリカ大統領のイスだ。今度の米大統領選挙ほど日本人の頭に強烈に焼き付けられた選挙は無かった。なにせ、11月7日に投票があってから約1カ月以上も経って、やっと次期大統領が決まったのだから。それも大接戦で、投票用紙の数え直しや裁判の応酬の未、とあっては、尾を引かない方がおかしい位のものだ。ちなみに米大統領選の投票日の決め方は、知る人の方が少なかろうと思うので、蛇足(今年はへビ年なので)を付け加えると、米国憲法で「11月の第l月曜目の次の火曜日」と規定されている。「それなら、第1火曜日じやないか」と早とちりしてはいけない。第1月曜目の次が第1火曜日ではない月があるのだ。2001年の暦でも、5月は1日が第l火曜日だが、第1月曜目は7日になる。
 もう一つ蛇足を付けると、本当の大統領選挙は実は12月18日だったのだ。11月に選んだのは選挙人538人だけで、その選挙人が実際に投票した日だ。結果は27l票対267票でブッシユの勝ち。選挙人の3人が謀反を起こせば新大統領はひっくり返る理屈だったが、まさか民主主義のアメリカだった。でも、司法が行政のトップを決めた、という後味の悪さは共和、民主両党のあつれきの解消、ブッシユ対ゴアの間柄の修復に相当の時間を要するだろう。そしてその都度、日本が振り回されるのだ。 (2001.2)