ネアカのびのび、へこたれず


 先日、さる団体の総会でS弁護士の講演を聞いた。「倒産を回避する方法」という演題で、その団体にはあまり関連性の無い話だったが、Sさんのしゃベりと具体的な例示の連続に引きずり込まれた。その中で耳に残ったのは、福島地裁で平成13年度にあった破産件数は613件、そのうちのほとんどが個人(多重債務者)の自己破産だったということだ。しかも最近は手続きがかなりスピードアップされて、申し立ててから半年から4カ月で宣告を受け、同時廃止となって借金の免責を受けている、という。この自己破産は身分上は後見人になれない、などの制約はあっても戸籍にも載らず、選挙権も失わない。官報には掲載されるが、ほとんど知られないという。公務員で自己破産しながら勤務しているケースもあるそうで、これを聞いて会場からどよめきが起きた。とまあ、暗い話から始まってしまったが、これも今の日本を象徴しているのかも知れない。

 そこで、今回は明るくする話にしたい。タイトルは‘出でよ、ネアカ経営者’。とかくこの世には沈没する企業が目立つが、その沈没から会社を守るために経営者は「ネアカ」になって従業員に元気と活力を与え、もっと企業を生き延びさせなければならない、という趣旨である。子供は親の背中を見て育つ、とよく言われるが、企業も同様。従業員は社長のひと言、行動に気を配って働いている。そこにマスコミで仕入れた情報の受け売りで「厳しい」「先行きは不透明」などと言っていては社員の心は萎えてゆくばかりである。昭和50年代後半に、三井物産は巨額の投資をしたのに採算の見込みが立たない石油化学会社の重圧に窒息状態になった。そのとき社長に就任した故八尋俊郎さんは「ネアカのびのびへこたれず」を座右の銘にして、社内、取引先、マスコミに元気と明るさを振りまいて、物産を救った。ヒマがあれば社内を歩きまわって、社員に駄 洒落を飛ばして楽しんでいたという。「社長はいつ仕事をするの」と言われると「社長の仕事なんてものは、みんなをヤル気にすることしかないよ」と答えたという。
 同様に、昭和61年から三菱商事社長だった諸橋晋六氏は「バカヤロのモロさん」の愛称で通 り、居酒屋で車座になって若い社員に「バカヤロ」を連発しては親近感を植え付けたという。その姿に心酔した社員がたくさんいた。「任期中は大過なく過ごそう」だの「前路線を引き継いで」などというサラリーマン社長でいては、この日本丸沈没の危機にある、今の日本経済の中では生き抜いてはゆけない。(2002.7.10)