新'三等重役'物語


 月刊誌「選択」を斜め読みしていたら、コラムに面白い記事が載っていたので紹介したい。「アフガニスタンの隠れ家でタリバン指導者だったオマル師がビンラディーンに語りかけた。‘あんたはアメリカ経済をメチャメチャにすると言ったが、いま米国では大企業のCEO(最高経営責任者)達があんたの代わりにやってくれるから楽だな’」。

 言わずと知れた米国でのエンロン不正、ワールドコム倒産など大企業の不正で株価が暴落、大打撃を受けている様子から生まれたジョークである。まさかビンラディーンに力を貸しているわけはないのだが、次々に不正が表沙汰になる事態に、アメリカという国の倫理性に疑問が出てきたことは間違いない。しかもアメリカの最高経営責任者たちは、自分の責任を認めず、謝らないことが大きな特徴だという。恐らく、今後に控えている裁判のため絶対頭を下げないのだろう。普段から自分の非はなかなか認めない米国人気質もあるのかも知れない。問題は、このアメリカの無責任風潮が日本経済にも移ってきているのではないか、ということだ。かって「アメリカがくしやみをすると日本がカゼをひく」と言われた時代があったが、今もそうらしい。

 10年前のバブル崩壊に伴って大企業が倒産した。そのころは日本の経営者はすぐ謝った。山一証券の社長が「私が悪いのです。社員に責任はありません」と号泣した姿が目に浮かぶ。潔く責任をとる経営者がいた。それがどうだ。今、大企業の責任者の歯切れは誠に悪い。中でも批判が集まっているのが日本を代表する商社三井物産だ。大学生の就職口のあこがれの的だったあの会社の社長が「居座った’暗愚’の王様」といった見出しを付けられて記事にされている。
 国後島ディーゼル発電施設をめぐる不正入札事件で社員2人が逮捕、起訴されたが、それまで「不正は無かった」と高飛車だった清水慎次郎社長がやっと記者会見して言った言葉は「このような事態を引き起し、心からお詫びします」だった。

 その心根は「オレは悪くないが、世間を騒がせたから詫びる」と部下の「個人プレーによる不正」にしてしまい、不祥事の責任は取らなかったのだ。昔のリーダーとは全く違う  人種が大企業のトップに座っているのだ。経営者も新人類になってしまった。再逮捕されても辞めないムネオさんと好一対だ。‘新三等重役’物語である。(2002.8.31)