七人の斬り合いの果てに



 とうとう、七人の侍が斬り合いを演じてしまった。半ば予想されていた結末となった。道路公団等民営化推進委員会の最終委員会である。「七人の侍は斬り合いはせず、一致団結して野武士をやっつけた。こっちもそういう風にやって欲しい」と小泉首相は願ったのだが、激論の未、今井委員長が土壇場で辞任して退席。残った委員6人が多数決で最終報告書をまとめ首相に提出した。もちろん、高速道路の新規建設をほとんど凍結する案である。今井委員長は建設促進を叫ぶ道路族議員と裏でパイプが通 じていて、建設凍結を阻止する姿勢がありありだった。「報告書を受け取った政府が実行できる内容を」ということのようだが、それが通 らなくなって投げ出した恰好だ。

 でも、よく考えてみると、この委員会はこれまでの審議会や各種委員会とはまるで違った審議ぶりだった。何故なら諮問する政府側で設ける事務局の意向やルールなどに従わず、のびのびと意見を出し、ぶっつけ合った半年間の審議だったからだ。恐らく事務局が期待する方向を守ろうとしたのが今井委員長ら少数派だったのだろう。そう言う意味では逆に審議会としては真っ当なもの、と言えるかも知れない。

 ただ、今回の半年間にわたる推進委員会の審議中に小泉首相がとったスタンスはあれで良かったのかどうか、いささか疑問が残る。形式的にいえば「私は諮問した。それを委員会で審議して頂き、その結果 出た結論を頂いて、それを私が政策に反映させる。だから報告書を貰うまでは何も言わない」というのは一見、正しいのだが別 な言い方をすれば‘建前論’だ。自分が選んだ委員の意見が対立して5対2で建設凍結派が勝つ状況となっても放っておくということは、小泉首相は高速道路の新規建設はやらない、ということになる。

 果して建前論をかざして見守るだけでよかったのか。とにかくバトンは首相に渡った。問題は推進委員会から政治の場に移ったのだ。そうなると小泉さんは道路建設促進を叫ぶ強硬な道路族議員や建設を待ちくたびれた地方自治体の矢面 に立つことになる。
 まあ、構造改革を政策の柱に掲げた鼻っ柱の強い小泉首相だから、ここは強引に乗り切る積もりだろうが、そんなに甘い局面 ではないように思える。自民党内は四分五烈。党の中に党がある様相の中に道路問題を投げ入れたら火に油を注いで、それこそ高速道の上を選挙カーが走り回るようになるだろう。景気対策をそっち除けで選挙をやれる情勢じゃあないと思うのだが小泉さん、どうする、どうする。(2002.12.10)