禁断の実に手を付けた


 参議院の倉田寛之議長が2月27日の記者会見で「禁断の実に手を付けた」といった発言をして注目を集めた。大島農水相の元秘書が献金を着服した疑惑について大島大臣が国会で答弁するさいに、想定問答集をこともあろうに衆議院法制局に作らせていたことについて、批判した言葉である。なぜ禁断の実かというと「三権分立の基本にかかわることで、今後とも絶えず在り方を考えないといけない」ということだ。三権とは立法・司法・行政で互いに独立している。農水大臣は行政府の長である。それが立法府で答弁するのに、立法府の機関である衆院法制局を利用した点が三権分立の原則に反するという訳だ。まさにその通りだろう。大島さんは法律相談に関しては法制局でなく、自分の顧問弁護士にすべきだったのだ。さっそく野党側が「農水相の疑惑逃れを法制局ぐるみでやっている」と攻撃姿勢を強めている。困った与党側は「想定問答集が外に洩れたのが問題」と法制局内の“犯人”捜しで八つ当たりしている。

 さて、福島県でも2月定例県議会が開かれているが、こっちは議員の質問をめぐって、あまり褒められた話でないことが常識化している。質問のネタを質問する相手の県庁側から作って貰っている、という通説だ。いわば立法府と行政府の癒着である。昭和30年代の県議会ではしばしば“爆弾質問”が飛び出し、県側や議会事務局をてんてこ舞させた。爆弾質間とは県政上での失態や隠されている不正などを野党議員が密かに調ベ上げて、いきなり壇上で質問することだ。当然、執行部には質問通告はしていない。だから知事ら執行部が答弁に窮して立ち往生する。議長があわてて「暫時、休議」を職権で宣し、議会運営委員会に持ち込んだりして時間稼ぎをする。庁内は大騒ぎだ。

 ところが経済成長が進み、世の中が次第に落ちついてくるに従って県会議員も上品?になったのか、爆弾質問は影をひそめ、質問通告どおりの質問戦に終始するようになった。と同時に「質問に立って選挙区での点数を稼ぎたいが、質問材料が無い」という議員は親しくしている県職員に頼んで質問材料を教えてもらう。県職員は自分が答弁に困るような質問を教えるハズがないから、シャンシャンで終える質問が罷り通ることになる。緊張感の無い審議がどんどん進んでゆく。ここから県議会不要論が出る。県会議員を頼まなくても市町村長や各種団体の長は直接、知事に陳情してしまう。慌てて議員が駆けつける本末転倒の姿に、55年経った地方自治での制度疲労ぶりが見えてくる。
                          (2003・3・1)