世論は必ずしも真ならず?


 小泉首相の支持率が41%に下がった。これまでも下がっては、またぶりかえしで上昇したりしてきたが、今度ばかりはそうは問屋が卸さないかもしれない。なにせ、失言が多すぎる。一国の首相なのだから、発言にもっと政治哲学が滲み出るような重みが欲しいのだが、軽い。民主党菅代表の「公約を次々に破っている」という質問にひっかかって「そんなことは大したことではない」と答弁してしまった。これまで長いこと国会の総理大臣発言を聞いてきたが、公約不履行を詰(なじ)られても、何とか言い逃れしてきたものだ。「大したことない」などと口走って、公約不履行ぶりを自ら認めてしまったケースは稀有(けう)のことではないか。

 イラク問題でアメリカ追随の姿勢を巡って野党党首と個別に会談した。もちろん我が国として北朝鮮問題もあり、米追随をせざるを得ない立場を理解してもらうのが目的だったが、反対政党という事を抜いても不評だった。中でも自由党の小沢党首は「人生の大事な時間を無駄に使われた」とカンカン。「米イラク攻撃への日本の対応は」の問いに「その場の雰囲気で決める」と答えた。「その場になって決めるという方針の政府が存在するのだから摩訶不思議な国だ。理念、ビジョンが無く日本を泥沼に陥れている」とミソクソである。

 「世論に従って動いて、政治を間違える場合もある」との予算委員会での答弁も物議を醸した。多分、首相の頭には先の太平洋戦争のことがあったのではないか。軍閥政府の下で、大政翼賛会が日本の世論を戦争へと集約させた。あの世論で日本は破滅の敗戦に追い込まれた。正に「世論に従って政治を間違えた」のである。でも1億国民が言論統制のもとに置かれて出来上がったあの時の世論は、それこそ今のイラクや北朝鮮の独裁政治でのそれと同じものだ。現代の過剰なほどの自由、平和の中での世論は、やはり国民の考え・目指すもの・願いを表していると思う。第一、小泉さんはその世論の強力なバックアップで首相のイスを手にしたハズだ。あの98%という、いま思うと馬鹿げたほどの世論の支持。それがいま‘世論ばかりが政治の方向ではない'みたいな発言は食言めいて聞こえる。
 ただ、毎日新聞が第2社会面に掲載している「日本のスイッチ」では「小泉首相の“世論に従えば間違う場合もある"」発言に対し2万7千人の回答者は「一理ある」が66%、「問題だ」が33%だった(3月17日付け)。やっぱり‘世論は必ずしも真ならず’なんだろうか。(2003.3.18)