惜しみて余りある事故死


 今回は“読み・聞き"の話ではない。私の体験と実感の話である。だから、メディアネットのこのコラムには相応しくないのかもしれないが、お叱りを覚悟で記しておきたいのだ。
 話は外でもない、(株)ゼビオの創業者で風雲児だった諸橋廷蔵社長のあまりに惜しまれる死のことである。さる2月25日(日本時間)に諸橋さんはハワイ・ホノルル市のコンドミニアム22階の窓から転落して亡くなった。政府の相次ぐ医療制度改革、と言うと聞こえはいいが医者への診療報酬を削り、患者からは自己負担を増やすという医療費削減策で全国の医療機関が青息吐息の中にあって、次々に新しい医療展開を進めて誠に元気な(財)脳神経疾患研究所附属総合南東北病院の筆頭理事を務めていた諸橋社長は2月22日からオアフ島で開催された同財団主催の第3回国際磐梯神経科学シンポジウムに出席した。もちろん静養も兼ねてのハワイだった。ゼビオの石井道夫専務も早くから渡邉理事長と交流があって財団理事になっており、今回も社長と一緒に学会に出席していたほか親しい仲間も一緒で、学会のレセプションに出たりゴルフを楽しんだりし、2月28日には郡山に戻る予定だった。

 そこに飛び込んで来たのが、あの悲報である。当のゼビオの社員は息をのみ立ち尽くしたし、総合南東北病院内でも重苦しい空気が覆った。ところが、この悲報がアッという間に広がった郡山市内で、追いかけるようにして社長の自殺説が猛烈な勢いで流れた。「財界ふくしま」や「政経東北」などから聞こえてくる情報は「本当に自殺なんですか。郡山中、自殺の話で一杯ですよ」というものばかりだった。自殺説の根源は同市財界の大物から出ていた。この日ハワイの情報通から「自殺らしい」という電話が大物のもとに届いたらしい。自殺の原因には「会社の後継選びで悩んだ末」とか「経営の行き詰まり」とか無責任な理由がこじつけられた。でも、ゼビオはそのあと3月期決算で未曾有の増収増益を発表している。また諸橋友良氏への継承も既定路線だった。

 死んだ前日に一緒にゴルフした仲間は「ショットがよくて『明日は貴方に勝てそうだ』と喜んで、翌日のプレーも約束したんだよ」と語っている。2月初めに前立腺ガンの検査をして「全く心配ない」という結果に喜んだ諸橋社長に自殺は無い。22階の窓は腰の高さに切っであったという。事故である。残念だった。(2003.4.30)