クビにならないキテレツ総裁


 国会は閉幕してしまったが、どうにも胸のつかえが取れない話が残った。日本道路公団の藤井治芳総裁の更迭問題だ。昨年後半に日本中の耳目を集めた例の道路関係四公団民営化推進委員会の論議の中で、当事者たるべき公団総裁がほとんど矢面に立たず「カゲで必死になって民営化を阻止しているんだろう」とカンぐられていたが、いろんな情報資料を“斜め読み"したら、この藤井総裁というご仁は相当に風変わりな人物のようなのである。

 今年1月未に、この藤井総裁は重要な視察日程をいきなりキャンセルして雲隠れしてしまい公団中が大騒ぎになった。重要な視察とは春に天皇・皇后両陛下が視察される東京湾アクアラインのチェックをするのが目的だった。朝、公団に「今日は行けない」と電話しただけで姿を消したのである。「両陛下視察の下見以上に重要な用件など、どこにあるのか」「捜査当局に呼ばれたのではないのか」といった声まで飛び交ったという。結局判らずじまい。捜査のことが頭に浮かぶような藤井総裁は建設次官から公団に天下った官僚OBだが、2000年の中尾元建設大臣の受託収賄事件にからんで処分され、厳しい批判を浴びた。以来、取材はもちろん記者会見も拒み“隠密行動”をとっているのだそうな。でもマスコミからだけならまだしも、公団幹部にも内密で雲隠れするのに職員は大弱り。「総裁は公団内部の者は誰も信用していない」と指摘する声もある。公団への通勤も公用車は使わずワゴン車で、役所に届け出ている自宅には帰らず「別宅」にコッソリ帰る。朝は別宅にワゴン車を呼んで公団地下の駐車場から荷物用のエレベーターで総裁室に入る有り様。

 まあ奇人の部類だが、仕事の方は傲慢そのものである。あくまで民営化に抵抗し続けて、自民党道路族の後押しが頼り。つまりは構造改革が錦の御旗の小泉首相に盾突いているわけだ。今国会ではとうとう「私は民営化のために全力をあげて努力している」と苦しい答弁をしたが、福田官房長官から「ま、これからの行動を見守りましょう」などと冷笑された。もちろん民営化推進委員会からは総スカンで辞任を迫られ、“幻の財務諸表”問題では白々しいウソを言い政府内部も批判的意見が大勢なのだが、何故か“クビ切り"までゆかない。役人の天下りってそんなに強いものなのか。自分から辞職などしないご仁だとなると任期が来るまで指をくわえて待っていなければならないのか、こんなキテレツ総裁でも。ああ、役人天国ニッポン!(2003・7・28)