これは電話テロ


最近、「またか」と腹立たしい思いをさせられたものに、元ハンセン病患者グループが熊本県のリゾートホテルに宿泊を申し込んで断られたニュースに対する国民の反応がある。ハンセン病は昔、癩病(らいびょう)と言われ、感染する不治の病とされて小島に隔離政策がとられてきた。しかし、近年になって感染症ではないことが医学的に証明され、厚生労働省は国の方針の誤りを認め一生を棒に振った患者に謝罪。元患者たちは天下晴れて自由の身となった。これで一般人と全く同じ行動がとれると元患者自身も思い、国民もそのように認知した、と思われた。ところがリゾートホテル側にこの認識が無かったのか、はたまた他の宿泊者への影響を心配したのか、宿泊を拒否してしまったのだ。その心底には正直のところ、ホテル職員にまだまだ元ハンセン病患者に対し“一般人と同じ”とは信じられない思いがあったのだろう、と勝手に想像している。だから「あそこのホテルにハンセン病の元患者が泊まった。もう泊まりには行かない」という顧客の反応が恐ろしかったのだろう。

 だが、事態は大変なことになった。元患者団体は猛烈な抗議運動を展開し、新聞・テレビが一斉にこのニュースを取り上げて表沙汰になってしまった。こうなると筋論ではホテル側に非がある。平謝りする経営者に元患者側は容赦なく抗議行動を続けた。それはしつこい程だった。ところが、そのうち元患者側に思いもかけぬ電話やメールが届き始めたのである。ハンセン病に対する偏見と、元患者たちの行き過ぎともいえる抗議行動へのそしり、批判、抗議の声だった。大半が電気通信を隠れ蓑にした匿名だ。これに今度は元患者たちが愕然とする。市民権を回復した、との思いは無残に打ち砕かれたのである。

 同じ様なことは平成15年2月に起きた川崎市での「古書店閉店強要事件」でもあった。本を6冊万引きされた。当然、店主は追及する。犯人の少年は名前を言わない。警察に通報しパトカーがやって来る。少年は逃げ警察が追いかける。少年は遮断機が下りている踏切に入って電車にはねられて死んだ。この過程で店主はどこも悪くないのだが、その直後から店主に非難の電話・ファックスが殺到し店仕舞いを強要、びっくりした店主は閉店しお詫びの張り紙まで出したあの事件だ。どうして同じことが起きるんだろう。これは電気通信を使った一種のテロだ。現代の「村八分」と言ってもよい。しかも、ほとんどが匿名だ。闇でほくそ笑む卑怯なヤカラがこの日本にウンザリする程いるのだ。 (2003・12・15)