どっ白けの麻原判決テレビ報道


オウム真理教の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫の一審判決公判をテレビで見た。午前10時に始まり、午後3時13分になってようやく主文が言い渡された。判決は死刑だったが、当然だ、と何の驚きも感慨も湧かなかった。日本中が7年半の長期裁判にうんざりしながら、「死刑しかない」と誰もが思い、そしてその通りになったのである。大方の人がもう醒めていた。だが、その中で大げさに興奮する集団が一つだけあった。テレビ局である。

 NHK初め各キー局とも特別番組を組み、東京地裁の玄関前にテント村を張った。そこに“お立ち台”が設けられテレビカメラが向けられている。「どうするのかな」と見ていたら、公判開始直後に報道記者が息せき切って走ってきてマイクを掴むなり「主文は後回し、判決理由から読み上げていますッ、主文は後回しッ」とハアハアしながら叫ぶのだ。それを受けてキャスターも「後回し、量刑は後回しなんですネッ」と興奮する。その後も入れ代わり立ち代わりして女性記者を交え、次々に息を弾ませながら断片的な情報をしゃべる。だがキャスターが「傍聴席の様子は?」と尋ねても、よく取材していないのか口をモグモグさせるだけ。何であんなに慌て急ぐんだろうと思ったら、他局との1秒を争う競争だった、と判ってア然とした。午後3時13分、主文が読み上げられた後はもっと凄かった。裁判所玄関前がバタバタと慌ただしくなったとたん、またもや記者が走ってきて血相を変えながら「死刑ッ、死刑です一」と叫んだ。息をゼイゼイさせながら、だ。数秒して次の女性記者がまた「今、死刑判決が下されましたッ」。誰も驚かないのに何度も”死刑ッ”の絶叫が続いた。キャスターが「麻原の表情は?」と尋ねても「いえ、私は被告の真後ろだったんで見えませんでした」「アッそう一」という具合。

 ここには視聴者のことなど考えない、テレビ局同士だけの競争があった。国民が「どうなるか」と興味深々な事件なら、これも必要だろう。だが、すでに国民の大半が醒めていると言うのに、テレビだけが一人はしゃいでいるのだ。”1秒でも早く’は視聴者のためでなく、テレビ局の争いのためだったのだ。盥(たらい)の中のケンカを、周りの国民が冷やかに眺めているマンガを思った。3月3日付け毎日新聞のコラム「牧太郎のここだけの話」でも痛烈に批判していた。この牧さんは判決文にも登場する元サンデー毎日の編集長。オウムキャンペーンの第一人者だった彼もどっ白けだったらしい。やっぱりなあ。                         (2004・3・4)