斜め読み聞きかじり

発想の転換に迫られる

 新聞の時事川柳をよく見る。物事の核心をズバリ突いている秀作があるからだ。 2月下句、毎日新聞の万能川柳にこんな句があった。「包丁を凶器と思ったことはない」という作品だ。言わずと知れた大阪府寝屋川市の小学校での侵入者による教師殺傷事件を詠んだものだ。包丁は台所で毎朝、母親が味噌汁の具を刻む音を連想するものである。人を刺し殺す道具なんかじゃなかった。それが、これまでの常識を見事にひっくり返してしまったあの事件に、驚き悲しむ心がこの句からにじみ出ている。
 その常識のことだが、実は日本は今、常識の大転換に迫られている。とても明るい未来、などと言えない深刻さを内蔵している転換なのである。それは人口の行方のことだ。このところ日本経済はなんだかんだと言いながら、年率3%程度の成長がみられる水準まで回復、社会全体に一種の安堵感が漂ってきている。だが少し長期的に目を転ずると、先行きはとても楽観は出来ないのだ。最大要因は2007年以降、日本人口が減少時代に入ることである。“この狭い国土に1億以上の人間が生きていて何処も人だらけ。少し減れば余裕が出るし就職難も緩和されていいだろう”などという軽い声が聞こえてきそうだが、とんでもない。人口が大幅に減れば経済が縮小し、福祉財源が不足してゆく可能性が高い。それは「日本のたそがれ」を招きかねないのである。

 人口推計というのは「予想」と違って統計学・推計学ではじき出される「予測」である。予想(よそう)は反対から読むと“うそよ”となるなどという冗談がある位だが、予測は信ずべき数字だ。国立社会保障・人口問題研究所の予測では今の1億2800万人が日本人口のピークで、あと45年後の2050年になると9200万人、2100年にはなんと5100万人と今の半分以下になるという。しかも日本型の人口減少は、少子高齢化という特徴を持つ。総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合はあと20年後には28%、45年に35%に達する。一方、働き手の生産人口(15歳〜64歳)は8600万人から45年後には5100万人に急減するというのだ。ということは労働力が減ることを意味する。人口減、とりわけ生産人口の減少は必然的に日本経済を需要と供給の両面から縮小させてゆく。消費者が減り、労働人口の減は企業の設備投資にブレーキをかける。個人ではどうにもならない事象、とはいえ、素早く発想を転換させて生き抜くチエがこれから試される。(2005・2・25)

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