市民〔citizen〕と結ぶネットマガジン!
建設メディア「MEDIA」
Home >斜め読み聞きかじり >2005/5/1

何事にもプラス志向を

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 今回はちょっと趣向を変えて、茶道の話にしたい。と言っても、そんな小難しい話ではない。別に茶道を修行したわけではないのだが回り回って目下、武者小路千家福島官休会の会長をしている。そこで“番茶も出花”八十八夜を迎えたところで、お茶を一服、という趣向である。
 茶の湯の道は平ったく言うと「“もてなし”のこころ、それを宗教のレベルまで昇華させてゆく道」とでも言おうか。亭主が客をもてなすために作法を鍛練し美を追求する。その好例となるエピソードがある。利久が交流した茶人にノ貫(ヘちかん)という人物がいた。かなり自由奔放な強者(つわもの)である。ある時、ノ貫が利久を茶席に招いた。利久が指定された茶席のくぐり戸から一歩踏み出した途端、大きな穴に落ちてしまった。そこは簀の子の上に土がかけられた落とし穴だった。利久はまんまとはまったわけだ。泥だらけになった利久を、ノ貫は湯浴みさせ新しい衣服で身支度を整え、サッパリしたところでお茶を出した。利久はこの仕打ちに全く短気を起こさず、茶席はこの話題で大いに盛り上がった。ノ貫は汗や泥を洗い流した時の、あのサッパリ感が最高のもてなし、と見た訳だ。実は利久はノ貫の策略を前から知っており、わざと落とし穴にはまったのだと言い後日、「折角の亭主の趣向を無駄にしてはいけない。茶の道は亭主と客が共鳴し合うことが大切」と説いている。

 時は初夏。入学や就職、転勤などで新しい人間関係がたくさん生まれている時機である。このニュー人間関係をどうこなしてゆくか。その神経の疲れが溜まって5月を迎え、いわゆる“五月病”が発生する。それを防ぐ1つのヒントが、この利久とノ貫の“落とし穴事件”の際に利久がとった行動ではないか。つまり、落とし穴をプラスにとるかマイナスにとるか、で相手に対する印象は随分と異なってくるはず。利久やノ貫のような格式張らない、遊び心を持てるような人との付き合いを是非、見習いたいものである。
 また、茶の湯には茶花を飾るが、それはあくまで野に咲いたままの姿が尊ばれる。岡倉天心も「必要のない草花の枝をみだりに切った時、茶やお花の宗匠は、これを恥じた」と書いて世界に日本の美意識を知らせた。グリーンベルト運動でノーベル平和賞を受けたケニアのワンガリ・マータイ環境副大臣が日本で「勿体ない」という言葉を知り、資源保護のキーワードにした。茶花を通じて日本の暮らしの中の“美意識"を見直す時機が来ているのではないか。(05.5.1)


Copyright (C) Medianetplan Co.,Ltd. All Rights Reserved.
このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。