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地に落ちた憧れの偶像

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 学生時代にのめり込んだ映画監督に英国のキャロル・リード監督がいた。「五本の指」「邪魔者は殺せ」「第三の男」など素晴らしい映画を作り続けたが、「二つの世界の男」という映画で思想分裂気味になって、アメリカにわたり「空中ブランコ」などという娯楽映画をつくったりした。このリード監督作品の中に「落ちた偶像」というのがあった。確かジョーン・フォンティーンが主役だったと思う。今度のライブドア堀江貴文前社長の逮捕劇で、真先にこの題名が頭に浮かんだ。若い人を中心に”あこがれ”の的だった彼はアッと言う間に地べたに転落し容疑者になってしまった。そしてベールを剥がれて明るみに出された”虚業’”人だまし”の数々。ここでも「信頼」という、社会基盤を支える最も大切な規範が失われていた。マンションの耐震強度偽装事件といい、日本はこの10年そこらで信用出来ない国に成り下がった。

 もともと日本は、これとは正反対の信用出来る社会だった。その象徴は老舗が大事に守り伝えてきた「のれん」であった。「あの店の商品はのれんを信用して買う」が当たり前だった。店の方も「のれんにかけて」より良い品を選んで販売した。100年も200年も続く老舗がこうして誕生した。新店はこれを上回るよい品を見つけ、安く販売して“追いつけ、追い越せ"の精神に徹した。「プロが素人を騙してはならない」が最も大切な職業の精神土台だった。なのに、どうしたことだ。これは姉歯建築士やヒューザー、ライブドアだけの事ではなくなっている、と見る。その根本は「企業の目的の中にあるべき公(おおやけ)の心」が極めて希薄になっていることがある。株式会社というものは株式を通じて投資された資金で生産などの事業活動をやる。このことが社会に貢献し、そして利益が伴ってくる。これで社員を養い、株主に利益を配当するのだ。ここに公の意識がある。この公を貫くためには短期的には利益とは一致しない場面もあるが、長い目で見れば利益の土台になるのである。ところがバブル崩壊以来、目先の利益だけに焦点を据えて、安全にかかわるリスクを冒しても儲けを増やす輩が横行している。鉄筋の削減を要求し、すぐに表面化する危険度に目をつむる意識が優先した。三菱自動車のリコール握り潰しも同様だ。経営者が長期的な目で対処してゆく日本の”お家芸”は近視眼経営者にとって代わられつつある。ライブドアの金儲け主義に至っては経営以前の悪行だ。楽天を選んだプロ野球オーナー会議の目だけが称賛されるとはー。(2006・2・26)


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