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深い感慨を覚えた昭和天皇発言メモ

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 7月20日付けの日本経済新聞でスクープした「昭和天皇の発言メモ」は少なくとも私個人としては、深い感慨を覚えさせられた。びっくりした、とか意外だった、とかいう単純な感情ではない。あの昭和天皇が、東京裁判でのA級戦犯を靖国神社に合祀したことに、こんなに激しい憤りを感じられていたという事実。「昭和天皇は日本をあの愚かしい戦争に導いた当時の軍人・外交宮に対し、こんなにも心の底では決して許さず、憎まれていたのか」という驚きとともに、なんか改めて親しみの気持ちが湧いてきたのだ。

 こう思うことの前提に半藤一利さんのヒット作品「昭和史」がある。昭和ヒト桁生まれとしては、自分が呼吸し続けてきた昭和という年月に強烈な興味がある。だから「昭和史」が発売されると同時に買ってむさぼり読んだ。かなり偏った見方の部分もあるが、曽って陸軍大将を夢見ていた軍国少年にとって、憧れの陸軍や海軍の将軍たちの大半が、実際は国の重要な政策に深い考慮もなく、戦争はやるが責任を回避する無責任な連中の集まりで、天皇の意思も発言も無視して、ただ戦争へ戦争へと国を駆り立てていった様子がぶんだんに記述されていた。それはうんざりするほどなのだ。半藤さんの結論は「なんとアホな戦争をやったものか」である。特に戦前は現人神(あらひとがみ)であり、あくまで戦争を回避し平和を希求する天皇を、軍人たちは欺いて満州事変を起こし日中戦争を拡大させていった。張作霖爆殺事件では関東軍の謀略だったのを田中義一首相がウソで言い逃れようとして「前言と違う」と天皇から叱責され、辞職の追い込まれた場面など、「なんたることか」と怒りを覚えるのだ。と同時に、天皇のやるせないお気持ちが痛いほど分かる気がしていた。

 その昭和天皇が「松岡や白取(本当は白鳥)までが」と独白されたという。松岡は松岡洋右外務大臣で日独伊三国同盟を結んだ張本人、白鳥敏夫はイタリア大使。軍人のみならず「あんな役人までが一」と天皇は慚愧に耐えなかったのだろう。A級戦犯合祀と同時に昭和天皇は靖国参拝を止められた。昭和という63年の間、昭和天皇は日本を敗戦に導いた軍閥族を心の底で決して許さなかったのだ。それが靖国参拝を止めることで表していた。小泉首相はこの天皇発言に対し「陛下にも様々な思いがおありだったんですね。でも心の問題だから参拝する、しない、は自由ですから。私は影響は受けません」と語ったが、心ない発言ではないか、不敬ではないか、と思うのだ。如何だろうか。(2006・8・5)


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