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「もったいない」はいいんだが一

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 外国のさる資源保護運動家が日本語の「もったいない」がひどく気に入って世界的な運動のキャッチフレーズにし、福島県も県庁が音頭取りになって新施策が動き出したようだ。このこと自体は戦中派として大賛成だ。とにかく物をあまりに粗未にしている今の世相をニガニガしく思っているのだから。でも、「こっちの“もったいない”の方は、一体どうなるんだろう」と興味半分、心配半分で見守っていることがある。それは7月2日に行われた滋賀県知事選で「新幹線の新駅も、淀川のダムももったいない」のワンフレーズで勝利してしまった嘉田由紀子知事のことだ。雑誌「選択」8月号によると、三選を目指して自公民相乗りで戦った国松善次現職に対し、政治にズブの素人である環境社会学者の嘉田さんが挑戦した。初めは「現職がダブルスコアで勝利」という見通しだったが、あれよあれよと言う間に形勢が逆転。国松陣営が危機感をつのらせた時はあとの祭り。3万票の差をつけて嘉田シロウト知事が当選してしまったのである。嘉田さんは長年、琵琶湖環境問題を研究していたから淀川ダムや新駅の事業を厳しく批判し、これを「もったいない」のワンフレーズに集約して有権者に訴えた。郵政民営化のときの小泉流ワンフレーズ戦法そっくりである。市民勝手連の選挙プロが付いていたらしい。分かりやすいワンフレーズと「JR快速で20分で京都に行けば“のぞみ”が利用できるのに、250億円もかけて1時間に“ひかり”と“こだま"上下1本ずつしか停車しない新駅が必要なのか」という論旨に、たちまち有権者は同調していった。

 ところが嘉田新知事がさっそく滋賀県庁に乗り込んで工事の凍結を宣言したまではいいのだが、実は新駅は用地買収も済み、関係市町村でも負担金拠出が各議会で可決されていて工事が部分的に始まっているのだ。県議会では新知事を支持した社民党は議席を持っていない。ほとんど野党の中で孤軍奮闘の嘉田県政はどんな政治的手腕を発揮するのか分からないが、下手をすると知事の不信任案可決、県議会解散を繰り返す悪いパターンになりかねない。こんな成り行きに、「公共のために」と土地を売った地域住民は一体どうなることやら、と不安顔だ。工事を止めたら無駄ガネが出る。それこそ「もったいない」事態になってしまう。一方では、8月6日の長野県知事選で脱ダムの田中康夫知事が三選を阻まれ、自民党県政に戻った。勢いの良かった無党派自冶体が揺らぎ始めている。そんな中での滋賀無党派県政はちょっと目が離せない存在だ。(2006・8・10)


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