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救急隊が“瀕死の重傷”

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 先月の9月9日は「救急の日」で、これに因んだ催し物が多く開催された。AEDと呼ばれる心肺蘇生の新兵器が街角に置かれたり、心肺蘇生術つまり人工呼吸や心臓マッサージなどの講習会がスーパーの一角で行われたりする。確かに一刻を争う時に心肺蘇生術をやったか否かで、生命が助かるか消えるかの瀬戸際に置かれるのだから、極めて大切なことだ。救急車もまたしかり、である。1分1秒を争って患者を病院に運ぶ。その時間の長短が生死を分ける。そのため救急活動も年々進歩して、ようやく救急救命士でも病院での規定の訓練を受けると、患者の気管に管を入れて呼吸を確保する気管挿管が出来るようになった。これまでは医者しか出来なかったのだが、救急車に必ず医師が同乗しているとは限らない。せっかく救急車で搬送しても途中で命を落としては元も子もない。そこで救急車の中で救急隊員が気管挿管をやって命を支えるのである。 

 その救急車だが、なんと救急隊自身がいま“瀕死の重傷を負って救急信号を発信している”というのだ。理由は急増する一方の出動要請に対して、救急隊員や救急車の増加が追いつかないためだ。消防庁がまとめた2004年1年間の救急車出動件数は全国で502万9000件に達し、史上はじめて500万件の大台を突破した。6.3秒に1回、全国の何処かで救急車が出動、年間に全国民の27人に1人が運ばれている勘定。因みに郡山市では市民29人に1人の割合だ。1994年が304万件だったのが10年間で65%、200万件近く増えたことになる。ところが救急隊の数は8.8%しか増えていないのだ。従って隊員1人当たりの出場件数は急増、94年の1日2回から今は3回になっている。
 原因はなんなのか。医学や防災体制が進歩しているのにまさか10年間で急病人や重傷者が65%も増えるなんてことはあり得ない。第1は高齢化による年寄りだけの世帯が倍増していることが挙げられる。身近に子供や孫がいなければ、すぐ救急車、となる。その2は、それほど重い症状でもないのに救急車を要請する傾向が強まっているのだ。若い両親が子供の病気に無知ですぐ救急車を呼んだり、中には通院のタクシー代わりに救急搬送を頼み、酷いのは「途中でコンビニに寄って」などと言いだす悪質ケ一スもある、という。だから、救急車の有料化とか、軽傷の場合の民間救急車導入、などの声も出始めている。いまや「救急隊自身が瀕死の重傷」という事態をもっと住民に分からせ、いざという時に備えさせる時期に来ているようだ。(2006・9・27)


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