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これじゃ偽装民主主義だよ

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏
 改正教育基本法が成立した。基本法と言うくらいだから理念を盛り込む法律で、いわば総論。その大きな改正点は教育の目標として「愛国心」を盛り込んだことだ。「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する態度を養う」という表現だ。言ってみれば、国民として当たり前のことなんだが、それをことさら法律で決めなければならないほど、日本人は自分の国を誇りにし愛する心が無くなってしまったんだろうか、との思いが先に立つ。
 教育は大事だ。目下、高齢人口に仲間入りしている世代はほとんどが“戦中派”だ。軍国主義の真っ只中で教育を受け、太平洋戦争では“鬼畜米英”なんて吹き込まれて敵愾心を煽り、中学生になっても「沖縄から九州に攻めてきた敵機動部隊は九州沖で必ず神風が吹いて全滅する」と信じ込まされていた。日本史の授業は天孫降臨から天照大御神や神武天皇など神話で始まった。建武の中興の後醍醐天皇や楠木正成が正しくて足利尊氏は悪人だった。戦後の授業で縄文・弥生時代の歴史を知ったり、南朝と北朝に分かれて天皇が2人いた時代を知ったときの驚き。軍国教育の罪の深さは、今も消えない。

 ところが、この教育基本法改正のため政府が2001年6月から全国で174回にわたって開催したタウンミーティングの大半が、政府によって仕組まれた「やらせトークショウ」だったことが明るみに出た。「閣僚と国民が活発に直接対話して政治・行政に反映させる」という触れ込みで始まった小泉改革への重要な行事なのだが、実は内閣府がシナリオを書き、配役(発言者)も決められていて金5000円ナリのギャラまで出されていた。さも自発的な発言のように装う演技の指導まであったという。“郵政刺客小泉劇場”のほかに、もう一つ‘やらせ小泉劇場’があったのだ。これには空いた口が塞がらない。
 戦後60年。この間に言論統制や軍国教育などの恐ろしさを充分に反省し、自由な発言や行動が出来る民主国家づくりに邁進してきたハズだ。でも今回の政府による発言誘導の思想には国民の言論を統制して、お上のやることだけが正しいと思い込ませる全体主義の匂いがしてならないのだ。今は軍人がクーデ夕一を起こして事を進めることはあり得ないが、政府や役人の今回のやらせ劇は現代的な全体主義への道ではないのか。民主主義を装った手法による「偽装民主主義だ」と言われても反論出来まい。こんな危なっかしい芽は早く摘み取らないと気付かないうちに、またもヒトラ一や東条英機を生んでしまうゾ。(2006・12・22)


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