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『吾亦紅』が流行ってきた

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 一昨年に大ブレークした秋川雅史の「千の風になって」は今もヒットぶりを続けているが、さすがに勢いは下降線のようだ。それに代わって、昨年後半いらい急上昇をみせているのが、すぎもとまさとの「吾亦紅」である。NHKがお堅い割りにはいち早く、火曜日の「歌謡コンサート」に登場させ、新鮮な衝撃をまき散らした。暮れの紅白歌合戦にも出場、司会をした笑福亭鶴瓶師匠が「来年(平成20年)は間違いなく大ブレークだっせ」と太鼓判を押していたが、その通りになっているようである。
 いまどきの音楽番組はクラシックはともかく、「ミュージック・ステーション」など歌謡番組を見ても、どの曲も歌詞が聞き取れず、メロディはリズムにかき消されてしまうような若者向けの曲ばかりだ。もともと、歌も唄も謡も歌詞があって初めて成り立つものだ。歌詞は“言葉”なのである。言葉として歌うことで愛情や心根、あるいは情景を聞く人に伝えるものだ。だから”初めに詩ありき”でなければ歌にはならないハズだ。ところが福島県出身で「高校三年生」など大ヒット曲を山ほど作詩した丘至灯夫さんが嘆くように、いまは先にメロディが出来て、それに合うように言葉を歌詞として付けていくのが主流になっているようなのである。これは邪道と言っていいんじゃないか。

 すぎもとまさとは作曲家の杉本真人ご本人である。これまで小柳ルミ子で大ヒットした「お久しぶりね」をはじめ数多く作曲を手掛けている方だ。だから渋い中年で、テレビ画面では正直言って”あまり冴えない”風貌だ。でも「吾亦紅」にはその方が良かった。♪マッチを擦れば おろしが吹いて 線香がやけに つきにくい さらさら揺れる吾亦紅 ふと あなたの吐息のようで・・・♪
 こう始まるこの歌は若者じゃだめだ。育ててもらいながら疎遠に過ごしてきた母へ詫びる歌は、やはりこの人でなければ似合わない。最後に声を絞って謳う ♪髪に白髪が混じり始めても 俺 死ぬまで あなたの子ども♪ が泣かせる。 ”死ぬまで、あなたの子ども”は当たり前、と言ってしまえばそれまでだが、それをハッキリ言葉にするところがグッと来るのだ。これで気付いたことがある。「千の風…」も「吾亦紅」もお墓が初っばなに出てくることだ。メロドラマ、ロマンスが常識の歌謡曲が抹香臭いお墓や線香で始まるのは珍しい。しかも2大ヒット曲がそろって型破りをした。21世紀の日本人のこころの揺れを感じさせる。間もなく春のお彼岸がやってくる。中年の墓参りが増えるかナ。(2008・3・10)


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