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私的「中国今昔ものがたり」

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 8月8日から始まる北京オリンピックの聖火リレーが世界で紛争を巻き起こしている。中国にとって“間の悪い”チベット紛争が起き、人権擁護団体やら「国境なき記者団」やらが中国批判を強めている。その一環として、中国でのオリンピックを中止させよう、と各国で聖火トーチを掲げて走るランナーに水を浴びせたりトーチを奪ったり、近づいて火を消してしまったり…。とうとう聖火は二重三重の護衛隊員に囲まれ、コースも10分の1に縮めたりランナーが倉庫に隠れてしまったり、いろんな防衛策をとって世界各国を回っている。日本にもその聖火はやってきて冬季オリンピックの地長野市をリレーして回ったが、その出発点がはじめは善光寺だった。”牛に引かれて善光寺参り”ならいいが、騒ぎの渦中の聖火は”厄介者”と寺には見えた。住職たちは同じ仏教の僧侶としてチベットの僧侶を思い、重要文化財の寺に万が一のことがあっては…と早々に出発点を返上してしまった。それでも落書きされた。

 こうなると“一体、何のための聖火リレー?”という素朴な疑問が沸いてくる。この思いはIOC(国際オリンピック委員会)も同じだと見えて、パリでの妨害の直後にゴスパーIOC委員が「IOC理事会は将来の五輪聖火リレーを再考すべき」と、今回の様な国際ルートの見直しを促した。さもありなん。なるべく一般市民には見せないように隠れて抜け道を走るなどという”本末転倒”ぶりではほとんど聖火リレーの意味はなさなくなっているのだから。
 さて、その中国だが、今から43年前のことが思い出される。昭和49年5月、例の江青など四人組による文化大革命が頂点にあった時に初めて中国を訪れ上海、南京、北京、広州と回った。そのとき付き添った通訳が商という名の小柄な美人だった。たまたま筆者と二人でホテル民族飯店のテラスから天安門前をウンカのように通る通勤自転車を眺めながら雑談した。そのとき商さんが言った。「中国人民が今の日本人のように自家用車を持てるのは何時になるんでしょうねェ。早くなりたい」。筆者はすぐに答えた。「10億を超える中国人がみんな自家用車に乗ったら、光化学スモックどころではない大気汚染に悩まされるでしょうネ。交通事放も多発し、新たな悩みが生まれますヨ」。

 いま、北京オリンピックで最も懸念されているのが大気汚染という話の度に、この小さな会話を思い出す。40年余りで自転車に代わって車が溢れる経済大国になった中国はいま、脱皮にもだえる巨大な獅子の姿のように見えて仕方がない。 (2008・4・25)


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