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Home >斜め読み聞きかじり >2009/5/11

坊主憎けりゃ袈裟まで?

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 新聞社には連絡部というのがあって、そこに速記者が何人か居た。出先の記者クラブや地方支社局から電話で吹き込まれる早口の原稿を速記文字で書き取り、すぐ翻訳して報道部デスクに提出するためだ。降版間際で一刻を争う事件記事ではそのスピードはまことに効果的だ。シロウトが漢字の説明を受けながら一行一行エンピツで書き取っていては折角のニュースも紙面に載らなくなる。この受け手の速記者はベテランばかりだからノロノロ送稿していると怒鳴られる。特に漢字の説明が悪いと叱られる。そこで漢字説明のいろいろな約束事を覚えさせられた。例えば「コンノ」という苗字の送稿では「イマコン」「イトコン」「チカコン」「カネコン」と区分けした。今野、紺野、近野、金野の区別である。佐藤は「甘い佐藤」という事にしてあった。「アベ」もいろいろあり阿部は「オモネル、ブブンノブ」、安倍は「アンバイ」という具合。遠藤、伊藤などの藤は「サガリフジ」という。遠藤は「トオイサガリフジ」伊藤は「イタリーノイ、サガリフジ」。「コノキノシバ タンボ」とくれば柴田である。こうして漢字にはかなり敏感になり、テレビのクイズ番組で出題される漢字の読み書きは大抵は分かり、孫たちの前で点数を上げている。

 その漢字物知りが腕を試す漢字能力検定がおかしな風の吹き回しになってきた。京都に本部がある財団法人日本漢字能力検定協会のスキャンダルである。財団だから公益法人で大きな利益をあげてはならないんだが、理事長の大久保ナニガシと息子の副理事長が膨大な利益を上げて私物化し、好き放題なことをやっていたのがバレた。文部科学省が認可した財団だから文部科学大臣が認可責任を問われてカンカンで、今年の漢字検定は一時は吹き飛びそうだったが、新しい経営者の努力でなんとか6月にはやれそうだ。一方、清水寺の年末行事になった「今年の漢字」は執事長が「こんなこっちゃ、協力できまへん」と言い出して、こっちは中止になる気配である。偉い学者センセイも「単に漢字が読めたり書けたりしても、意味が分かりそれを実践しなけりゃ無意味だ」などと言い出す始末。まるで漢字検定が悪者になったような風潮に包まれている。

 でもちょっと待てよ。漢字が読めたり書けたりすることが悪い、とは到底思えないのだ。いまの風潮は「坊主憎けりゃ袈裟まで」の類に陥っていないか。確かに大久保ナニガシはけしからん奴だが、だからといって漢字まで毛嫌いするのは筋違いというもんだろう。読み書きソロバンはまだ生きているんじゃ。(2009・5・11)





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