市民〔citizen〕と結ぶネットマガジン!
建設メディア「MEDIA」
Home >斜め読み聞きかじり >2009/7/1

いいねェ「トビウオジャパン」

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏

 日本水泳連盟が6月25日に、これから競泳日本代表の愛称を「トビウオジャパン」とすることを決め、胸の公式マークは日の丸とトビウオをあしらったものにした。いいねェー、いいねェー、とりわけ敗戦の惨めさを知っている団塊の世代以上の高齢者には、ひとしお思い入れが強かろう、と思う。

 トビウオと言えば古橋広之進の名前が瞬時に浮かぶ。まだラジオ、それもNHKしか無い1948年(昭和23年)8月の夜、日本国民の大半がラジオにかじりついて古橋、橋爪、浜口らの神宮プールでの競泳実況放送に聞き入ったのだ。そして次々に打ち樹てられる世界新記録に、敗戦でうちひしがれた日本人はみんな元気づけられたのだ。その古橋さんは2008年10月に文化勲章を受章した。スポーツ選手では初めて、と聞いてびっくりしたが、日本人のを奮い立たせたあの力は美術や文芸、演劇の大御所に勝とも劣らない。遅きに失した感があるくらいだ。その受章の際に聞きかじった逸話を思い出した。

 あの世界新記録を量産した昭和23年8月は実は戦後初のオリンピックであるロンドン大会が開催されていたのだ。当時、日本は敗戦国で物資不足。明日をどう食いつなぐか、に追われていた。だから海外からのニュースなどは占領国の民にはなかなか届かなかった。新聞は裏表の2ページ、いわゆるペラである。殺伐とした世情と配給物資のニュースで埋められていた。しかも、敗戦国で日本はロンドン五輪に参加出来なかったのだ。

 だから、参加出来なかった無念をぶつけるために日本水泳連盟は五輪の競泳と同じ日程で日本選手権大会を神宮プールで開いたのだった。これに出場した古橋選手(日大)は千五百メートルで18分台を出し1着、四百メートル自由形も優勝した。その日にロンドン五輪で行われた水泳優勝者のタイムと比べると、千五百で41秒、四百で7秒6の差をつけていたのだ。ロンドン五輪に出場していたら千五百では60メートルの差を付けてぶっちぎりの優勝を果たし金メダルだったことになる。すごかったんだなァ。

 翌24年、国内は下山事件や三鷹事件、松川事件が相次ぎ世情が不安に包まれた中、古橋選手はロサンゼルスの全米選手権に出場し千五百で18分19秒という驚異の世界新記録を出してくフジヤマのトビウオ〉の異名が付いた。世界新記録は33個を出したが、五輪では惜しくも盛りを過ぎていて無冠に終わった古橋さん、今81歳を迎えられたが、曾っての活躍ぶりをよく知って、その重みを噛みしめながら「トビウオジャパン」の愛称を口にして欲しいのだ。(2009・7・1)





Copyright (C) Medianetplan Co.,Ltd. All Rights Reserved.
このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。