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Home >斜め読み聞きかじり >2010/1/22

戦ってください

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏


 民主党の党大会の席上、小沢一郎幹事長が「検察と全面対決する」と宣言した。これを受けて、政権トップの鳩山首相が「戦ってください」と激励したんだという。はて、首相は内閣、つまり全官公庁を指揮する頂点に立っている方である。むろん法務省もだ。検察庁は司法ではない。法務省の一機関であって法務大臣の指揮の下にある行政機関なのである。法相は首相の指揮下にあるわけだから、検察庁は首相が握る行政機関の1つだ。となると、首相が検察側と全面対決している人物に対して、「戦ってください」と激励するというのは「ウチの部下と戦って勝って下さい」といっているのと同じことである。これはおかしいんじゃないか。首相が決して口にすべきではない発言で小沢氏を激励している。一国を預かる宰相としては余りにも浅薄な発言であった。
 「論言汗のごとし」という格言をだいぶ前にこの欄で取り上げたことがあった。王の発言は流れ出た汗のように、もう二度と戻らないのだ、という戒めである。別な格言に「駟(し)も舌に及ばず」というのがある。これも、一たん口から出た言葉は、この世で一番速い乗り物(駟=4頑立ての馬車)に乗っても追いつけないのだという意味である。今回の鳩山さんの発言は最高権力者としては中国古来の戒めを、いささかもかえりみない失言と断じてよいだろう。
 思いは新聞社も同じだったようで、さっそく翌日の福島民報は一面トップで取り上げ、わぎわざ抽見出しに「戦ってください」をそのまま使っていた。のちのち問題発言になると判断したからだろう。ただ、新聞社によって「戦う」と「闘う」の2つに分かれていた。ニュアンスは戦争とスポーツぐらいの差があるが、個人的には「戦う」が相応しい、と思っている。さすがに首相官邸は悪評に驚いて発言の修正に回った。「幹事長を続けて対決していく、という小沢さんを激励した発言だ」と首相も言い訳しはじめた。だが、綸言は戻らず、駟に乗っても追いつけない。この4カ月でこの方は何回、言い訳したことか。

 1月19日付け読売新聞コラムでソ連のフルシチョフのエピソードが取り上げられていた。独裁者スターリンの死後、党大会でフルシチョフ第一書記がスターリンの専横を厳しく批判した。その演説の最中に会場から声が上がった。「その時、あなたは何をしていたのか」。壇上のフルシチョフは「いま発言した人は誰?挙手を願います」。誰も手を挙げないのを見て、続けた。「今のあなたのように、私も黙っていた」。小沢独裁の匂いがする民主党の中でも?(2010・1・20)






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