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Home >斜め読み聞きかじり >2010/3/19

ささやかなマグロ談義を一席

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏


 このところ、テレビも新聞も「クロマグロが食えなくなるかも.」というニュ−スが氾濫している。日本で消費されているクロマグロ(本マグロ)の40%を占めている大西洋・地中海産を輸入出来なくすることがワシントン条約締結国会議で締結されそうだからだ。クロマグロが絶滅危惧種に指定されるのだという。マグロの絶滅が心配されているって?魚屋の息子に生まれ子供時代に魚ばっかり食わされてきた身としては、それこそ”信じられな?い”である。

 マグロの王様クロマグロ、鯛の王様が真鯛、鮮の本家は真蝶というのだから鮪も真鮪と呼ぶべきなんだろうが、ママグロとはいかにも呼びにくい。そこで鮪だけが本鮪、またはその姿が黒いから黒鮪となったんだろう、と勝手に想像している。魚の名前って言えば子供のころに父親が酔うと、おやじギャグを連発したが、その一つにこんなのがあった。「あのな、街を目の不自由な按摩が歩いていたんだど。その後ろから自転車に魚を積んだ行商が『カド、カド、マガレイ、マガレイ』って呼び声をかけて走っていたんだど。この声に按摩はあわてて曲がって溝に落ちたんだど」。カドはカドイワシつまりニシン(錬)、マガレイは真鰈のことで、スーパーなど無かった時代は自転車の後ろに魚箱を乗せて鮮魚を売り歩いた。生まれ故郷の塩釜では「ホヤー、ホヤ」と掛け声をかけてホヤ(海鞘)専門の行商人がいた。何奴ホヤだけが専門行商人なのかは分からないが、三陸海岸が目前の港町らしい夕方の風景だった。閑話休題。

 今こそ、クロマグロのトロ(ハラス)は最高の珍味と持て囃されているが、この味が知られたのは意外に近いのだ。恐らく昭和の初めではないか。江戸時代末期に握り寿司が誕生したころはマグロは赤身だけで、しかも保存方法は切り身を醤油に漬ける「ヅケ」だった。これを握ったのである。マグロの腹の部分(ハラス)は油ぎっていて敬遠され、誰も買わないから捨てられていたらしい。明治になって文明開化でチョンマゲがザンギリ東に変わって牛鍋が流行りだした。でも魚河岸の連中は銭が無くて牛が食えない。そこで牛鍋の代用にトロとネギを鍋にして食った。これがネギマ鍋(葱と鮪の鍋)だ。トロを生で食う刺し身や握り寿司はさらに時代が下がってからで、食通人が口にするものであった。それが今や、子供までが「トロは最高」などと真先に手を出す。隔世の感があるネ。今後は手に入らなくなりそうだとテレビが騒いでいるが、一貫が数千円もする大トロの寿司にはとても手が出んから、どうでもいいや。
(10.3.18)







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