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Home >斜め読み聞きかじり >2010/8/9

ウナギとり召せ

建設メディア顧問
マスコミ人OB会福島ペンクラブ会長
元福島民報専務・編集局長 星一男氏
星一男氏


 今年の土用の丑の日は7月26日だった。人様並に家内が用意したウナギの蒲焼を食べたが、実は土用は別に真夏とは限らない。土用は立夏・立秋・立冬・立春の前の18日間を指すのである。そしてこの18日間にそれぞれ丑の日がある。だから、なにも真夏だけには限らないのだ。それが、何故か真夏の土用の丑の日に絞られた。これは江戸時代の蘭学者平賀源内がウナギ屋に頼まれ「土用の丑の日にウナギ食え」のキャッチコピーを考え出したのが元だ、というのが通説である。確かに暑い夏にエネルギー豊かなウナギは元気回復にもってこいの食材である。なんと言っても旨い。食欲減退の口にもウナギの脂は合うのだ。この習慣を生んだ源内さんには一応、感謝する必要があるようだ。
 
 このウナギ(鰻)だが、今年は異変が叫ばれている。国内産のウナギが半減する、というのだ。いま、我々が食べているウナギは蓄養鰻である。海から稚魚を採取して育てたもので、卵を採取して育てる養殖ではないのだ。ウナギの生態は昔からナゾに包まれた部分が多い。まず、その産卵場所だ。日本の河川にいるウナギは3年から4年経つと、秋遅くに海を泳いでなんとフィリピン沖のマリアナ海溝にまで行って、そこで産卵するらしいのだ。なんという長旅をするもんだねェ。しかも、ここに着くと一部のウナギにメスの性徴が現れて卵・を持って産み落とすらしい。つまり、日本で泳いでいるウナギにはメスオスの区別が無いことになる。ということは、日本の養殖池でどんなに育てても決して抱卵はしないということになる。だから完全養殖が出来ず、蓄養鰻になる訳だ。郡山市の有名な鰻屋「水国」さんのPR誌を見ても「毎日鰻を割いているが、精巣は見ても卵巣らしい部位は見たことが無い」とご主人が述べている。
 
 マリアナ海溝で産み落とされた卵は2千メートルの海底で孵化してシラス鰻となって、今度は春ごろ黒潮に乗って日本の河川まで辿り着く。ちょうど半透明の爪楊枝ぐらい。これを専門漁師が網で掬いとって蓄養業者に運ぶのだ。この量が平成22年は半減している。従って2、3年後の蓄養鰻の数が激減すると騒いでいる訳だ。子供のころ、宮城県塩釜市の海辺で育った筆者は中の島という掘割で干潮時に石の陰にウジャウジャかたまっていたシラス鰻を見たことがある。あの頃は、まだまだ海の資源が豊富で、誰も見向きもせずに子供の遊び道具になっていた。このシラス鰻もそうだし、秋の風物詩ハゼやボラも遊び釣りの対象だった。あのシラス鰻にこんなドラマが潜んでいたとはなァ。(2010・8・10)






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