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「勝利の女神」が逃げるとき

 “悪夢を見た”瞬間であった。夏の甲子園には女神もいれば、悪魔もいる。6回まで8−2と完璧な試合運びに、聖光学院の監督も選手も応援席も、そしてテレビの前で応援するすべての人が、女神の微笑みを信じて疑わなかった。9回ウラのまさかの“サヨナラ・スリーラン”に愕然とした。
前半は聖光学院がノビノビとプレーをする姿と大量得点で、「もう勝利は間違いない」と誰もが確信した矢先だった。勝利の女神はなぜか、エースを下げた所からスーと逃げ出していった。ここで一息ついてしまった監督采配の難しさがある。再びエースをマウンドに送ったが、すでに試合の流れは東海大甲府へと傾いた。“一試合、一試合、気を抜かずに、全力でぶつかること以外に勝利の女神を引き留めておくことはできない。
 30数年近くなるが、同じ経験をしたことがある。県インターハイのバレーボール決勝リーグで、優位に立った所で「優勝だ」と意識したとたんに勝利女神は逃げ出した。結局、失点数の差で全国大会出場を逃した悔しさを味わった悪夢の1日だった。
 今年のお盆、それ以降も昼夜となく忙しい日々である。アテネオリンピックは「テレビに釘付け」である。体操ニッポンの復活、柔道や競泳のメダルラッシュ、金メダルが悲願のソフトボールや野球に一喜一憂した。特にシーズン以上に熱のこもったプレーをする松坂投手、15歳の愛ちゃんが卓球に挑む“ひたむきさ”など、オリンピックでしか味わえない感動の連続で連夜寝不足である。勝利の女神は今日は誰の頭上から逃げ出し、誰の頭上で微笑むのかを見定めるのも、また楽しいテレビの味わい方なのである。 (2004.8.18)
〈甲子園の土を持ち帰る聖光ナイン、NHKTV中継より〉